2018年1月、タレントの松本明子氏は香川県高松市の実家を約600万円で売却しました。空き家のまま25年も維持してきた家で、その間にかけた費用は実に約1800万円。いったいなぜそんなことになってしまったのでしょうか。松本明子氏の実家が建てられた際のエピソードを紹介します。

高松の実家は、父のこだわりが詰まった「木組みの家」

会社勤めをしていた父が高松市の郊外に家を建てたのは、私が幼稚園の年長さんの6歳のときでした。1972年のことで、それまでは市内の借家住まいでした。

 

新しい家は、敷地約90坪、総檜造りの平屋建て5DKで約3000万円(上物約2000万円、土地約1000万円)。大金ですから、もちろんローンでの購入です。

 

念願のマイホームということで、父のこだわりは、それはもう大変なものでした。普通の大工さんではなくて、わざわざ神社やお寺などを手がける宮大工さんに頼んで「木組みの家」を建てたのです。

 

マイホームを建てるなら木組みの家と前から決めていたようです。「この家は釘1本使っていないんだぞ」というのが父の自慢でした。

 

凝った欄間や床の間があり、庭には自分で運んできた庭木を植え、大きな庭石や石灯籠を置いていました。家の周囲にはトラックで大量の石を運び、石垣も造りました。

 

昭和1桁世代はマイホーム=小さなお城の意識が強いとよく言いますが、父もまさにそうでした。宮大工さんの建てた小さなお城。それも石垣に囲まれた山城です。建てた場所が、市の中心部から8キロ以上離れた小高い山の上だったのです。

 

山の上ですから景観は抜群です。高松市内は一望できるし、目の前には源平合戦で有名な屋島という山があって、その先には瀬戸内海も見えました。父は縁側に座ってその景色を眺めるのが大好きでした。

 

ただし、市の中心部まで出るのは一苦労。山を下りるのに歩いて30分、電車に乗って30分。幼稚園を転園しなかったので通うのに小一時間かかりました。これが1年続きました。借家のときは歩いて15分でしたから、最初のうちは1人で山を下りながら、なんでこんな目にあわなきゃいけないんだろう、と泣きましたね(笑)。

 

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※本連載は、松本明子氏の著書『実家じまい終わらせました! 大赤字を出した私が専門家とたどり着いた家とお墓のしまい方』(祥伝社)から一部を抜粋し、再編集したものです。

実家じまい終わらせました! 大赤字を出した私が専門家とたどり着いた家とお墓のしまい方

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松本 明子

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数十年前に建てたマイホーム。現在は子が独立し、故郷に親御さんだけが住み続けているという方がほとんどなのではないでしょうか。ゆくゆくは実家に住む人が誰もいなくなってしまうのは予想できるけれど、日々の忙しい生活でと…

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