「ロシア寄りの中国の苦境」…欧米の報道に中国反発
2022年9月、ウクライナ側が一部領土をロシアから奪還したとの戦況が伝えられた際、欧米が「このニュースで、ロシア寄りの中国は引くに引けなくなった」としたことに対し、中国官製メディアは「中国はそもそも一度も虎にはまたがっておらず、したがって、どうして“騎虎難下”、またがった虎から降りることは難しい→引くに引けない、ということがあろうか」と反論している※。
※ 「中国从未骑在俄乌冲突的“虎背”上(中国は一度もロシア・ウクライナ衝突の“虎の背中”に乗ったことはない」環球時報社評 2022年9月14日
中国国営メディア新華社電によると、6月15日、習近平国家主席69歳の誕生日におこなわれた、ロシアのウクライナ侵攻後2回目となる習・プーチン電話首脳会談で、習氏は「中国は一貫して歴史的経緯と是々非々(是非曲直)に基づき、独立自主の判断をしている」「主権や安全保障などの核心的利益と重大関心(関切)問題について、ロシアとの相互支持を続けたい」と発言。
「歴史的経緯」がウクライナはかつて旧ソ連の一部であったこと、「是非曲直」の「非」「曲」が中国やロシアが言うところのNATOの東方拡大を指しており、習発言はロシア寄りの姿勢を示したものと広く理解された。
会談はプーチン氏が中国から十分な支持がないと不満を漏らしているとの情報があるなかで、習氏がアレンジしたと憶測されたものだった。他方、9月上海協力機構(SCO)首脳会議の際におこなわれた、ロシアの侵攻後初めての対面による習・プーチン首脳会談では、ウクライナ問題を巡るプーチン氏と習氏の温度差が際立った。
本連載では、各種データで中ロ経済関係の現状を把握したうえで、中国内の専門家やメディアが本問題をどのようにみているかを中心に関連文献をサーベイし、ウクライナ問題が中ロ関係を始め今後の国際社会にいかなる影響をもたらすことになるのか、いくつかの論点を提起する。
1.中ロ経済貿易関係
2.中国・ウクライナ関係、一帯一路への影響
3.中ロ互いにとっての重要性、利用し合う実務的関係
4.中国のエネルギーと食糧の安全保障
5.国際社会の多極化・共存、経済フローバル化の弱化―中国の懸念
6.地域別の動向―中国内の専門家はどうみているのか
7.金融グローバル化にも逆風?
8.中国への対応
第1回目の本記事では、1の「中ロ経済貿易関係」について解説する。
中国とロシア、近年の経済貿易関係の状況
分析の前提として、まず中国とロシアの経済貿易関係が近年どのような状況にあるのかを把握しておく必要がある。
◆輸出入構造
中国のロシアからの主要輸入品は原油などエネルギー・鉱物資源、主要輸出品は機械電子品、その他様々な消費財である。
2021年対ロ輸出676億ドル、20年506億ドルから34%の大幅増で、機械電子品が4割以上を占めた。輸入は793億ドルで、こちらも2020年572億ドルから39%の大幅増だった。ロシアは世界市場においてエネルギー輸出大国で、原油、天然ガス、石炭の各々について、生産では世界3位、2位、6位、輸出では2位、1位、3位だが、中ロ貿易でも、中国の対ロ輸入の64%を占める509.6億ドルがエネルギー、さらにその50%は原油で、エネルギー貿易が中ロ経済関係の鍵になっている。
中国の対ロ貿易シェアは、輸出が2%前後で横ばいであるのに対し、輸入は上昇傾向にある。