金融引き締めによりリート市場は軟調な展開
■現在、世界的な高インフレで金融市場は不安定な動きとなっています。米国では今後も米連邦準備制度理事会(FRB)が4%を超えて利上げを行うと見られているほか、欧州でも天然ガス価格の急騰等による高インフレを抑えるべく、今後も利上げが見込まれています。アジアでも高インフレに対応するため、多くの国で利上げが行われています。このためリート市場は軟調な展開となっていますが、今後はどのように見ることができるのか、検討してみます。
■日本ではようやく新型コロナウイルスのオミクロン型の感染拡大が落ち着きを見せてきたところですが、世界的には今年初めがオミクロン型の拡大ピークで、多くの国ではウィズコロナの下で経済活動の正常化が進められています。アジアでは、シンガポールやオーストラリアで感染抑制が奏功し、コロナ規制が撤廃されたことで、経済が堅調に回復しています。
シンガポールやオーストラリア経済は好調
■消費動向について、人々の移動の変化を計測する「Google Mobility(小売・娯楽)」でみると、アジア3ヵ国はいずれも改善しています。ただコロナ規制が厳しめの香港では改善が足踏みしています。一方、シンガポールやオーストラリアでは感染者数の落ち着きとともに改善傾向が続いています。
■シンガポールでは、4月以降、ワクチン接種を条件にすべての国と地域から隔離なしでの渡航が認められたことで、ビジネスや観光目的の来訪者数が大幅に回復しており、経済が順調に持ち直しています。例えば、7月の小売売上高は前年同月比+13.7%となるなど、今年4月分以降2桁の増加が続いています。またホテル業界では、客室単価や稼働率の上昇が続いています。
※個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません。
■オーストラリアでは、4-6月期の実質GDP成長率は前年同期比+3.6%と、市場予想を上回る堅調な伸びとなりました。経済の再開に伴い、宿泊・飲食サービス等の家計消費や、旅行・輸送サービスが成長をけん引しました。また、最新8月の失業率は3.5%と前月を0.1ポイント上回ったものの、就業者数は増加しており、雇用情勢は依然歴史的な高水準にあります。
相対的に高い利回りと景気回復でリート市場は堅調か
■利上げにより、各国の国債利回りは上昇していますが、リート価格が調整していることもあり、リートの配当利回りは相対的に高い水準となっています。
■シンガポールでは、景気の持ち直しが背景となって、テック企業を中心にオフィス需要が旺盛となるなど、オフィス市場をはじめとして今後もリート市場は堅調に推移すると見込まれます。
■オーストラリアは、中国をはじめ世界経済の減速に伴い成長ペースは鈍化するものの、堅調な雇用情勢や高水準の貯蓄、交易条件の改善を背景に景気の回復基調が維持されると見込まれます。新型コロナに関する規制が概ね撤廃されていることから、今後は商業施設への来場者数の回復が見込まれるなど、リート市場は堅調に推移すると見られます。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『調整するアジア・オセアニアリート市場 経済正常化が進むシンガポールやオーストラリアに注目』を参照)。
三井住友DSアセットマネジメント株式会社