遺留分の事前放棄は家庭裁判所に申し立てる
相続人となる者の一部に遺留分を放棄してもらいたいような場合には、事前放棄をしてもらうことを検討してみてもよいかもしれません。
例えば「長男に遺産をすべて相続させる」という遺言書を作成したようなケースであれば、他の相続人には遺留分を事前に放棄してもらうのです。
遺留分を事前に放棄するためには家庭裁判所に申し立てて、その許可を得ることが必要となります(家庭裁判所の許可率は90%(平成18年当時)となっています)。
ただし、申立てができるのは、被相続人の配偶者と第一順位の相続人に限られます。遺留分の事前放棄を申し立てる際には、収入印紙800円分と連絡用の郵便切手が必要となります。申立ての際に必要となる書類は申立書と被相続人の戸籍謄本(全部事項証明書)、申立人の戸籍謄本(全部事項証明書)などです。
ちなみに、相続開始後の遺留分の放棄は相続人の自由であり、家庭裁判所の許可は不要です。
遺言書の付言事項で「意思」を伝える
公序良俗に反しない範囲であれば、遺言者が伝えたい希望や事実、訓戒などを遺言に付言することで遺言者の真意を強調し、たとえ法的な効力がなくても、残された人たちがその内容を理解し納得したうえ、その希望や遺言の内容を実現することが可能です。
例えば、祭祀主宰者の指定(民法897条)、葬式や法要の方法、また事前に医師への相談や確認が必要となりますが、献体、臓器提供、尊厳死等に関する内容の指定も、遺言者本人の意思を伝える手段として確実に効力を発揮します。
遺産の処分方法等に関する事項を記載した後、付言事項の形で、自分の望みをかなえてくれるよう、こうした事柄に関しても自分の意思を伝えておくことを検討してみてもよいでしょう。
例えば、延命措置の拒否(尊厳死)を求めるのであれば、下記のような文例が考えられます。
(文例)
1 遺言者がすでに死期が迫っていると診断された場合、いたずらに死期を延ばすだけの 延命措置は、一切お断りいたします。
2 遺言者が、いわゆる植物状態に陥った時は、一切の生命維持装置をとり外してくださ い。
なお、献体、臓器提供、尊厳死等に関する要望については、前述したエンディングノートで触れることも可能です。エンディングノートに記載しておき、さらに付言事項で重ねて強調しておくことも、自分の意思の固さ、揺るぎなさを伝えるという意味では有効といえるかもしれません。