就職して知った地方公務員の現状
しんじょう君が生まれるきっかけは、2012年4月まで遡ります。
須崎市は高知県中部に位置し、太平洋に面した人口約2万人の小さな自治体です。特産品は新鮮な魚。
とりわけソウダガツオの稚魚〝新(しん)子(こ)〟の刺身に仏手柑(ぶっしゅかん)という柑橘をかけて食べるのですが、とにかく鮮度が命なのでほかの地域に持っていくことが難しく、幻の魚なんて呼ばれてるんですが、この世で一番おいしい食べ物の1つだと私は思っています。
さて、新子や新鮮な魚、都会に住む人から見ればびっくりするくらいお酒に寛容な雰囲気など、探せば魅力たっぷりな須崎市。なのに、私が市役所職員に就職した当時は「町おこしをしよう」なんて機運の高まりがあったわけではありません。それどころか「何やってもダメな町」と後ろ向きな雰囲気が漂っていました。
財政もけっこうヤバく、当時、財政破綻で話題になっていた北海道夕張市に迫るほどの全国ワースト5位。市民自ら「須崎は終わってるから」と自虐発言をするのが普通という状況でした。
市長から直々に発破をかけられる
ノリで田舎の市役所に就職したまでは良かったんですが、市民も市役所も諦めムードのなかでみんな「この町は終わってる」との自虐を口を揃えていうので「これはマズい。そんな終わってる町で定年まで過ごすのちょっとしんどいな……」と思ったのが就職した当初の感想です。
そして、入庁してから1ヵ月くらい経ったとき、所属している企画課に楠瀬耕作市長が訪れました。市長は、新市長の椅子に就いたばかりで、地元タクシー会社の辣腕経営者としても知られる人物です。
公務員にしては長髪だったので、何かやりそうな雰囲気があったのか、たまたまなのか知りませんが、市長が突然「お前はアイデアを出して頑張れよ!」と、直接声をかけてくれたのです。
正直インターネットで「椅子に座ってれば給料がもらえる」と評判だった市役所職員ですが、「もしかして何か頑張らないといけないのかな?」と思ったのと、ちょうど市民が自虐する市で定年まで過ごすのも嫌だと思っていたので、渡りに船、とばかりにこの日から市を盛り上げ「自分がおもしろく生きる」ために、勉強を始めました。
守時 健
パンクチュアル 代表