(※画像はイメージです/PIXTA)

新社会人の女性が投資詐欺の被害に遭い自殺するといういたましい事件がありました。投資詐欺の手口は巧妙化し被害者もあとを絶たず、深刻な社会問題となっています。そんななか、2022年9月12日、ある「内閣府令」が交付されました。これは、かねてから問題視されてきた「合同会社」を利用したスキームを規制するもので、10月3日から施行されます。合同会社スキームの問題点と、新たな規制の内容、投資詐欺に騙されないため知っておきたいことについて、説明します。

金融当局、消費者庁も危険視!「合同会社スキーム」とは

「合同会社スキーム」について説明する前に、合同会社とは何か、簡単にお伝えします。

 

合同会社とは、出資者がお金を出資することで「社員」となり、事業により利益が出れば配当金を受け取れるしくみの会社です。

 

「社員」というのは会社への出資者を意味する法律用語で、一般的な用語法としての「社員=従業員」とは異なります。

 

株式会社の「株主」のようなものだとお考えください。

 

「合同会社スキーム」は、お金を出資して「社員」になってもらう形で不特定多数の人からお金を集め、それを運用するというものです(【図表1】)。

 

【図表1】合同会社スキームのしくみ

 

しかし、このしくみには問題がありました。それは、金融商品取引法の規制を免れることができてしまうということです。

規制逃れのためのスキームが投資詐欺の温床に

すなわち、金融商品取引法は、金融商品の取引の公正をはかり、投資家の保護を目的とする法律で、そのために、金融商品取引業者について厳しい規制を課しています。

 

たとえば、株式、債券、投資信託等の金融商品を取り扱う業者については、監督官庁において「登録」「認可」「免許」を受けなければならないという参入規制が課せられています。

 

また、金融商品の募集に際しては内閣総理大臣への有価証券届出書の提出や、投資家に対する目論見書の交付を行わなければなりません。

 

さらに、監督官庁への定期的な報告と、出資者に対する継続的な情報提供を行わなければならないのです。

 

それ以外にも、金融商品取引業者には厳格な規制が課されています。

 

このように、金融商品取引法の規制の下では、公正性と透明性が強く求められます。

 

ところが、「合同会社スキーム」の場合、名目上は、あくまでもその合同会社自体の事業のための資金調達を行う目的で、出資してくれる「社員」を募集するという形ですので、金融商品取引法等の厳しい規制は適用されてきませんでした。

 

つまり、許認可なくして簡単にお金を集めることができるだけでなく、集めたお金の運用状況についての出資者への情報開示や説明についても、基本的には法律の規制を受けないことになります。

 

このことは、消費者・投資家保護の点で大いに問題があり、また、投資詐欺を誘発する危険性があるものです。

 

事実、証券取引等監視委員会や消費者センターには、以下のような事例が報告されていたとのことです。

 

・合同会社が多数の従業員(使用人)を用いて、電話やインターネット、投資セミナー等様々な手段により、高利回りをうたって勧誘する

・若年層から高齢層まで幅広く勧誘する

・投資家が勧誘に応じて出資した結果、勧誘者と連絡が取れなくなる

・勧誘時にうたわれていた利回りで運用されず、投資した資金自体も回収されない

 

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