(※画像はイメージです/PIXTA)

親が住んでいる土地と建物を子どもたちでどのように相続したらよいか、という相談は多くあります。「将来できるたけ揉め事がないように平等に分けたい」というのが多くの人の願いですが、特に不動産(土地)が相続財産の多くを占める場合には、相続財産を平等に分けることは難しい場合もあるでしょう。このような土地を含む遺産の分割について検討した事例を、税理士法人田尻会計の税理士・古沢暢子氏が解説します。

東京・世田谷の土地…母と2人の子で円満相続を目指す

今回の相談事例では、父親が所有する土地の上にある建物に両親と長男家族が同居しており、長女は賃貸アパートに住んでいます。父親の相続財産の全体を把握したところ、両親と長男家族が住んでいる土地の価値が相続財産の大部分を占めていました。

 

今、父親に相続がおこった場合、遺産をできるだけ平等に分けるにはどのような方法があるか、という相談です。

 

ご家族の話をお聞きしたところ、父親の相続後も母親と長男家族はその建物に居住し続ける可能性が高いということで、④の換価分割は除外されました。また、土地の相続税評価額が高額となり、現時点では一人の相続人が代償金を用意する目途が立たないため、③の代償分割の方法についても選択が難しいという結論でした。

 

さらに②の分筆を検討したところ、建築物の敷地面積の最低限度を定める規制(細分化規制)の関係で、土地を分筆してしまうと、その利用に大きな制限がかかってしまうことがわかりました。この規制は、防災や景観の観点からミニ開発を抑えるために各自治体が都市計画において定めているものです。

 

相談事例の土地は、世田谷区に所在する180m2の土地で、建築物の敷地面積の最低限度は100m2と定められていました。この土地を2筆以上に分筆してしまうと、建物を建てられない部分ができてしまうため、分筆は行わないことになりました。

 

世田谷区や渋谷区などは最低限度の面積が他の地域より大きい傾向にあるため、実際にこれらの地域に住んでいる方にとっては、土地の利用や売却時に検討すべき事項が増えるのではないかと感じました。

 

結果として現時点では、①の法定相続分にて相続をする案をベースに検討を進めていくこととなりました。居住用の小規模宅地等の特例を考慮して母親と長男の相続分を増やす方法、土地とその他の財産の配分割合を変える方法等の案がでています。

 

相続対策や遺産分割に関する相談では、「平等に分けたい」という意見をよく聞きますが、この「平等」の基準が一番難しいところです。今回の事例でも、長男は両親と同居しているため、両親の介護等に関しては金銭的にも精神的にも長女より負担が大きくなっています。この点を相続対策や遺産分割の際に考慮することも必要なのではないでしょうか。

 

相続について家族で話をすることは、心情的に難しい部分もあると思います。しかし、実際に相続がおこった後では、対策が間に合わなかったり、意見がまとまらなかったりすることも多いのが現状です。できれば親が元気なうちに、家族全員でそれぞれの思いを伝える時間を設けられると良いでしょう。

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