不思議なマネーゲーム…富裕層が仕組債を購入するワケ
しかし株価が100%未満であれば、3.33%のクーポンだけもらって、もう1ヵ月延長となります。そして1ヵ月後再度上記3つの対象資産である、テスラ、AMD、JPモルガンの株価をチェックして、100%以上なら中途償還2ヵ月で終了となります。ここでも3.33%のクーポンがもらえるわけです。
こういうプロセスを12回、毎月繰り返して、結局満期の1年後まで行った場合、最後の判定日に株価が当初のノックイン価格より下回っていたら、当初の株価で一番下落している銘柄の株を投資家は強制的に受け取ることになるのです。
ちなみに毎月の判定日にクーポントリガー価格(上記であれば当初株価の70%未満の株価)をつけてしまうと、低いクーポンである0.10%になってしまいます。
以下のようにまとめられます。
①投資日よりも判定日の株価が高ければ高クーポンと元本が戻ってくる。
②投資日より判定日の株価が高くなくとも任意の水準X%以上であれば、高クーポンで次の判定日まで債権は継続。
③投資日より判定日の株価が高くなくかつ、任意の水準X%未満であれば、低クーポンで次の判定日まで債権は継続。
そしてノックインした場合、満期日の判定日に上記100%以上でなければ当初の株価で一番下落している銘柄の株で対象資産が戻ってきてしまうというものです。
不思議なマネーゲームのようですね。
なぜ、富裕層は仕組債を購入するのか? その理由には、低金利環境下において金利が高く「見た目がキレイ」である点。そして、証券会社など売り手にとっても実質的な手数料が稼げる点が挙げられます。
ご存じの通り、日本の定期預金の金利は『0.002%』です。1000万円投資しても1年で200円、税後160円です。特茶一本しか買えません。それに比べれば、債券投資で30%なんて目を引く投資話でしょう。しかも証券会社やそのIFA(証券仲介業者)が熱心に勧めてくるので『働いて得たお金、お金にも働いてもらおう』となるわけです。