写真:PIXTA

一般社団法人フィリピン・アセットコンサルティングのエグゼクティブディレクターの家村均氏による、最新のフィリピンレポート。今週は、コロナ後の経済復興・活性化を図っているフィリピンのIPOの動向をみていきます。

今週の注目キーワード…再生可能エネルギー

フィリピンの億万長者エンリケ・ラゾン氏は、港湾運営とカジノ運営で財産を築きました。彼の次のターゲットは、この国で始まったばかりの再生可能エネルギー産業です。ソーラーファーム、バッテリー施設、水道プロジェクトに注力しています。

 

今年後半に上場予定のプライム・インフラストラクチャー・ホールディングスを通じた彼の環境への取り組みは、2040年までに再生可能エネルギーの使用を50%に増やすという政府の計画に沿ったものです。

 

電力需要の伸びが新規電力容量を上回っているフィリピンでは、あらゆる種類のエネルギー源の確保が急務です。必要な石油の多くを輸入している同国は、価格上昇に対する緩衝材として、燃料補助金を増やしたいと考えています。

 

国内の再生可能資源を開発することは、国が石油と石炭への依存を減らすことにも役立ちます。同社は、年間約140万トンの石炭の消費量に取って代わるメガソーラーを建設していますが、これは同国の年間必要量のほぼ6%に相当します。また、マニラのすぐ南にあるラグナデベイにある1,400メガワットの水力発電所と、2025年までに首都周辺地域に5億1,800万リットルの水を供給する2つの水プロジェクトも進行中です。これらのプロジェクトを軌道に乗せられるかどうかは、同社が11月に予定している256億ペソ(4億4,920万ドル)の新規株式公開にかかっています。

 

フィリピンは、エネルギーミックス全体に占める再生可能エネルギーの割合を、2019年の20%から2040年までに50%まで増加させることを目指しています。マルコス大統領は、7月の施政方針演説で、気候変動アジェンダに対応するため、太陽光、風力、水力、地熱エネルギー源が重要であると述べました。ただプライム・インフラストラクチャー・ホールディングスの再生可能エネルギー事業拡大にはリスクもあります。サプライチェーンの混乱により、ソーラーパネルの価格が10年ぶりの高値になっていることです。

 

さらに、欧州と米国が気候変動への対応を急ピッチで押し進めているため、激しい競争により、今後数年間はパネルの価格が高止まりする可能性があります。そうなると、ラゾン氏のメガソーラープロジェクトのコストが上昇し、収益性が損なわれる可能性があります。

 

現在、プライムインフラは、フィリピンの首都マニラの半分に水を供給するマニラウォーターから収益の80%を得ています。そして、4~5年後には、現在の20%未満の電力収入が40%を占めるようになると見込んでいます。

 

※当記事は、情報提供を目的として、一般社団法人フィリピン・アセットコンサルティングが作成したものです。特定の株式の売買を推奨・勧誘するものではありません。
※当記事に基づいて取られた投資行動の結果については、一般社団法人フィリピン・アセットコンサルティング、幻冬舎グループは責任を負いません。
※当記事の比較するターゲット株価は、過去あるいは業界のバリュエーション、ディスカウントキャッシュフローなどを組み合わせてABキャピタル証券のプロアナリストが算出した株価を参考にしています。

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