ドル円がおよそ24年ぶりの水準まで円安となるなか、株式会社オープンハウス ウェルス・マネジメント事業部のチーフストラテジストである浅井聡氏は、「為替を読むために“第二の基軸通貨”ユーロを知る必要がある」と語ります。日本円の立ち位置について、「ドル・円・ユーロ」の3方向から、詳しくみていきましょう。

長期に影響する「ドル高」、「円安」要因とは?

ドル円相場を本格的に検証する前に、ユーロ独自の事情、つまり「ユーロ安」要因がはたして、「円安」要因と被っているか否かを検証しておく必要があります。

 

もし、「ユーロ安」要因と「円安」要因が被っていれば、対ドルの為替レートは連動し、すなわち「ドル高」要因に置き換えられます。そのためにもユーロドルのパリティ割れのニュースには気を配っておく必要があるのです。

 

現在、主な「ユーロ安」要因はこうです。ユーロ圏もアメリカに匹敵する高いインフレ率に悩まされており、欧州中央銀行ECBはマイナス金利政策から脱却し、利上げの方向性を明確にしていることから、金利差はあるものの、そのスタンスはアメリカと同じ方向性を持っています。

 

しかし、ロシア制裁の影響を大きく受けているユーロ圏では、資源供給制約による景気後退要因がコロナ後の活動再開(つまり雇用の拡大)を阻害しているため、スタグフレーション懸念によるユーロ安ドル高の牽引役になっています。これは程度の差こそあれ、日本でも同じ状況であり、置き換えられた「ドル高」要因と言えるでしょう。

 

そしてアメリカ。いち早くコロナ後の経済活動の再開を果たしたことで有効求人倍率は2倍にまで達しており、また供給制約による資源高に対しては原油や天然ガスの輸出超過国となっています。雇用を守りつつ利上げのできるアメリカには、言わずもがな「ドル高」要因が満載です。

 

あえて「ドル安」要因を探すとすれば、対GDP経常収支が-3%台まで悪化していることくらいでしょう。しかしこれも世界の一大消費大国アメリカにしてみれば、標準的なレベルであり、大きな要因にはなりえません。

 

このように現在のグローバル経済環境は、アメリカとそれ以外の国という構図が明確になっており、その分「ドル高」、「ドル安」要因について見極めていくのは意外と簡単です。

 

「ドル高」要因を材料として為替相場が動いているのであれば、その主たる取引相手であるユーロとの相場が取り上げられることとなり、折しもユーロドル相場がパリティという重要な節目を迎えていることからも、パリティがより注目されることとなっています。

 

グローバル目線で見るなら、私たち日本人もドル円相場のゆくえを占うためには、先ずユーロドル相場のゆくえに注目していかなければならないことがおわかりいただけたことと思います。

 

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