ドル円がおよそ24年ぶりの水準まで円安となるなか、株式会社オープンハウス ウェルス・マネジメント事業部のチーフストラテジストである浅井聡氏は、「為替を読むために“第二の基軸通貨”ユーロを知る必要がある」と語ります。日本円の立ち位置について、「ドル・円・ユーロ」の3方向から、詳しくみていきましょう。

大荒れの為替相場…円安?ユーロ安?それともドル高?

インターバンク(銀行間)為替市場は基軸通貨であるアメリカドルを中心に取引がなされています。ニュースで見るユーロ円相場は、ドル円相場×ユーロドル相場=ユーロ円相場 という単純な掛け算で算出されているだけで、イギリスポンドやスイスフランなどの主要通貨でもまったく同じ仕組みです。

 

たとえば、ある日、ユーロが対ドルで2%下落しユーロ安になったとします。同じく日本円が対ドルで2%下落して円安になったと仮定しましょう。これは要因という観点から「円安」だと呼べるでしょうか? これは明らかに「ドル高」要因です。

 

また、ある日、ユーロが対ドルでほとんど変化がなく、日本円が2%下落したらどうでしょうか? これこそが「円安」と言えるでしょう。

 

それでは、2022年、実際に年初来のユーロドル、ドル円の動きを同時に見てみましょう。

 

出所: Financial Times 2022年
[図表3]年初来ユーロ対ドル変動率(緑色線)、日本円対ドル変動率(黄色線) 出所: Financial Times 2022年

 

もし、ユーロドルとドル円が連動していれば、それは「ドル高」要因を反映した為替市場だと判断することができます。確かに、トレンドは一致しており、ユーロも日本円も下落傾向にあるため、「ドル高」要因が介在していることは間違いないでしょう。

 

しかし、ユーロの下落率は約-12%、対して日本円の下落率は約-18%となっており、その差は歴然です。

 

もちろん、これには地政学的リスクなど少なからず「ユーロ安」要因も存在しますが、ここでは単純化のために、ドルと円のためだけに材料が現在化したと仮定しましょう。

 

この変動率を使うと、-12%分が「ドル高」要因、差の-6%を「円安」要因と分類することができそうです。

 

出所:Google のデータを基に筆者作成
[図表4]日本円の対ドル騰落率と、ユーロの対ドル騰落率の傾向(2021年1月以降) 出所:Google のデータを基に筆者作成

 

そこで、図表4をご覧ください。これは2021年初来の毎週末のドル円相場、ユーロドル相場の毎週末騰落率を繋いだものです。2021年1月から2022年9月にかけて、多少の乱れはあるものの、概ね左下方向に進んでいることがわかります。下方向に進めば円安で、左方向に進めばユーロ安です。

 

もし「ドル高」要因しか材料がないとすると、日本円とユーロは同じ変動率を示すはずで、緑色線と平行に移動していたでしょう。しかし、実際のチャートではそれよりも右方向へ移動する傾向を見せています。この左方向へのズレが「円安」要因の大きさを表しているのです。

 

昨今のドル高円安トレンドは、この「ドル高」要因と、「円安」要因とに仕分けをすることによって、より深く相場を観察することができるのです。

 

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