教育内容を迅速かつ、継続的に改善できる未来が
しかし、現在の教育ではこのタイムラグが大きすぎるのです。たとえば、高校の情報教育でいうと、2013年の学習指導要領で「情報の科学(情報技術の活用、問題発見・解決のための科学的な考え方の育成)」と「社会と情報(情報化社会の影響の理解、情報機器によるコミュニケーション能力の育成)」が選択必修となりました。
2022年には「情報I」が必履修、「情報II」が選択となり、その生徒が受験する2025年の大学入試から「情報」が課されます。
振り返ってみれば、Windows95が発売された1995年から一般家庭に急速にパソコンが普及し、2000年を過ぎた頃にはほとんどの企業がパソコンの恩恵を受けていたはずです。
つまり、2000年代の社会人にとって、「情報」はすでに必須科目だったと言えます。にもかかわらず、学校教育で「情報」が必履修になるまでに20年以上かかっています。
もちろん、必修になる前から学校教育にまったく「情報」の要素がなかったわけではありませんが、科目として独立していない以上、先生にとっても生徒にとってもそれは「おまけ」でしかありません。
一方、IT教育先進国のイギリスでは、2014年にプログラミング教育が導入されていますが、これは2020年に導入された日本の小学校よりも6年早いことになります。
ただ、イギリスでは1995年にはすでに「IT」が、1999年には「ICT(情報通信技術)」が科目として導入され、プログラミングとまではいかないまでも、パソコンの基本的な使い方は学校で習得できるようになっていました。いかに日本の学校教育が社会とのタイムラグがあるか、おわかりいただけると思います。
教育にまつわる旬なデータがオープンになっていけば、学校側の現状が即座に産業界にフィードバックされ、カリキュラムの改善につながる意見を企業側から出せるかもしれません。
ここでいう「データ」とは、学習活動や学習履歴だけでなく、学校生活や課外活動での学びや意欲、感情や健康状態など、子どもに関連することがらすべてです。「何をしているときが一番楽しいか」「いま一番興味があることは何か」「学校で嫌なことがあったか」「家庭で困っていることはないか」など、子どもの心の内が知れるような項目も含まれます。
毎日のようにデータが収集できれば、分析に手間がかかったとしても、少なくとも年単位で「教育」に変化を起こすことができるでしょう。
それは、IT企業がサービスにアクセスしてくるユーザーの行動を分析しながら機能をアップデートしていくように、立ち止まることなく教育内容を継続的に改善していることになります。