早期対処のために「MCIの人にみられる行動」を知ろう
現在の65歳以上の7人中2人は、MCI(軽度認知障害)か認知症であるという報告がなされています。また、「認知症予備軍」といえるMCIの状態で何もせずにいると、4~5年後にはその半数以上の人が認知症になってしまうというデータも示されています。
それを避けるためにも、自分がMCIであることを早めに発見し、予防策を早期に講じることが大切です。もっと言えば、MCIであることに早く気づくために、認知症のことを正しく理解することが重要なのです。
そのために大切なのは、日々の生活のなかでの「従来との違い」や「何度も感じる違和感」といった変化にいち早く気づき、「ひょっとしたら…」と疑ってみることです。日々の変化に敏感になることで、早期の対策が可能になるのです。
たとえばMCIの人に現れそうな行動や状態は、下記のようなものがあげられます。日頃の掃除や洗濯、買い物や料理などの行動のなかで、「最近、不安が募るようになった…」という方は、どのくらい当てはまるかチェックしてみると良いでしょう。
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<日常生活で「以前と比べて違うこと」が増えていませんか?>
【掃除や洗濯】
□ 掃除や洗濯の回数が減った
□ 途中でほかのことを始めてしまい、なかなか終わらない
□ 家のあちこちに脱ぎっぱなしの衣服が点在している
□ ゴミの出し忘れや曜日を間違えることが増えた
□ 洗濯をしたあと、干すのを忘れてしまうようになった
【スーパーでの買い物】
□ 買い物リストを置き忘れて出かけてしまう
□ 家にまだあるのに、同じものを買ってしまう
□ 手持ちのお金では足りない買い物をしてしまう
□ 小銭を出すのが面倒で、お札を出すことが多くなった
□ 帰りに立ち寄った先に、買ったものを置き忘れてしまう
【料理】
□ 鍋やフライパンを焦がしてしまう
□ 同じ献立やメニューが続くようになった
□ 味付けが濃くなったり薄くなるなどムラが生じる
□ 作ろうとしたメニューができないまま食材が余る
□ 調理に要する時間がかなり長くなった
出所:浦上克哉監修『すぐに忘れてしまう自分が怖くなったら読む本』(徳間書店)
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MCIの段階だと、生活にほとんど助けがいらないため見過ごしてしまいがちですが、認知症へと進んでいく前の、予防効果が大きな段階であることをぜひ知ってください。以前とは様子が変わってきたと本人やご家族が気づいたら、一度専門医を受診することをおすすめします。
浦上 克哉
日本認知症予防学会 代表理事
鳥取大学医学部 教授