同じ「もの忘れ」でも、老化と認知症ではまったく違う
「え~と、あの人の名前は…何だったっけ?」「あれ、昨日の晩ごはん、何食べたかしら?」…ふとしたことが思い出せなくなり、「ひょっとして認知症??」と不安にかられる人は少なくないでしょう。
誰でも歳をとると体や内臓の働きが衰えますが、同じように脳の働きも若い頃と同じようにはいかなくなります。新しいことを覚えにくくなったり、人や物の名前をすぐに思い出せなくなるのは、中高年にとっては珍しいことではありません。
このような状態を「もの忘れ」といいますが、多くの場合は老化によるものです。そしてもの忘れには、老化のほかに認知症などの病気によるものがあります。この2つは同じもの忘れでも、まったく異なるもの。似て非なるものであることを知ってください。
老化によるもの忘れは、自分が体験したことは事実として覚えています。たとえば昨日の晩ごはんを食べたこと自体は忘れません。何を食べたかはすぐに思い出せないこともありますが、じっくりと考えたり、人からヒントをもらうと思い出します。
一方で、認知症によるもの忘れは、自分が体験したことを覚えていません。出来事全体の記憶がすっぽりと抜けてしまい、自覚できないのです。晩ごはんで何を食べたか思い出せないのではなく、食べた体験そのものを忘れてしまいます。
もの忘れで日常生活に支障をきたすことはほとんどありませんが、認知症はそうはいきません。認知症が進行すると、忘れたことに対する自覚がなくなり、普段できていたことができなくなって、日常生活に支障をきたしてしまうのです。