認知症の進行を遅らせるには「思いやり」が大切
家族が認知症と診断されると、誰だって不安になります。「この先、どう接していったらいいのだろう?」と心配になるに違いないでしょう。けれども、認知症は明日突然症状が悪化して、物事が認識できなくなる…という病気ではありません。ごく緩やかに進行していくものですから、家族の対処の仕方によって、病気の進み具合を遅くしていくことが十分に可能なのです。
そのために大切なのは、まずは「相手を思いやる」ことです。認知症になったからといって、特別難しいことをしていく必要はありません。なによりも、認知症になって戸惑い、動揺しているのは本人です。そのことをまずはしっかり理解してあげること。そして、不安な思いをふくらませていかないよう気持ちに寄り添い、支えてあげる。それをできるのが、家族などの周りの人たちなのです。
認知症の進行をできるだけ遅らせる、つまり認知症の治療は、家族のサポートがなければ成り立ちません。ご本人の複雑な気持ちを理解することから始め、「相手への思いやり」を大事にしながら日々を過ごしていきましょう。
薬の服用は「本人任せ」にせず、家族が管理
■「薬、ここに置いておくから飲んでね」では飲み忘れるのも当然
認知症の治療は、主に薬による薬物療法と、ケアやリハビリテーションによる治療があります。
具体的な方法は原因となっている病気によって異なりますが、治療薬については残念ながら、現時点では根本的な治療効果がある薬で承認されているものはなく、あくまでも症状を改善していくための薬にとどまっています。
とはいえ、症状の進行を遅らせることは大きな意味がありますから、継続的な薬の服用はとても大事です。ただ問題なのは、ご本人がそれを飲み忘れてしまいがちなことなのです。
そこで必要なのが、家族のサポートになってきます。薬を決められた回数と量で飲んでいくための服薬管理を、家族がしっかりと行うことが不可欠。本人が薬を口の中に入れて飲み込むまでの確認を必ず行うなど、徹底した管理を続けていくことが大事です。
なかには、「薬をここに置いておくから飲んでね」と机の上に置いたままにしたり、手渡ししてあとは本人に任せてしまう方も少なくないでしょう。ご本人は「はいはい、わかった」と返事はいいので、家族も安心しがち。けれども、多くの場合でそのまま飲み忘れてしまうのです。
■認知症による物忘れや失敗を「怒る」と、認知症の悪化を招く
認知症のなかでもアルツハイマー型はまさに忘れる病気ですから、それを受け容れた上で接することが必要です。
「なんで忘れるの!」「いま言ったばかりでしょう!」などと怒るのは禁物。そんな接し方をしてしまうと病状はどんどん悪くなってしまいます。
認知症のせいで失敗をして、家族に怒られてばかりだと当然気分も滅入ってきます。自分のなかで「もう何もできなくなってしまって、ダメな人間になってしまった…」と思ってしまうと、症状がどんどん悪化していく側面がありますから注意してください。