「脳トレの勧め」は認知症の悪化を招くことも。認知症の人にやってはいけないこと (※写真はイメージです。/PIXTA)

認知症は、患者本人とどう接するかによって症状が悪化したり、やわらいだりすることがあります。認知症研究の第一人者・浦上克哉氏が監修した『すぐに忘れてしまう自分が怖くなったら読む本』(徳間書店)より、「認知症の人にやってはいけないこと」を見ていきましょう。

認知症の人と接するときの大原則は「3つの“ない”」

認知症の人と接するときは、「驚かせない・急がせない・自尊心を傷つけない」の3つの「ない」を心得ておきましょう。これは地域で認知症の人やその家族に対してできる範囲で手助けする「認知症サポーター」の養成講座でも基本とされていることです。

 

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①驚かせない

認知症の人に話しかけるときはゆっくり正面から近づき、その人の視野に入ってから声をかけて驚かせないようにしましょう。複数で取り囲むと恐怖心をあおりやすいので、できるだけ1人で対応します。後ろから唐突に声をかけるのは禁物です。

 

②急がせない

認知機能が低下していると、何をするにも考える時間が必要になり、動作が遅くなってしまいます。とはいえ、「できない」のではなく、「時間をかければできる」こともあるのです。いら立った態度を見せたり、「まだですか?」「早くして!」などと急かしたりしないようにしましょう。

 

③自尊心を傷つけない

認知症の人が何か失敗したり間違ったことを言ったりしたとき、はっきり指摘したり訂正したりすると、本人は何が悪いのか理解できず、不安や不満を抱えてしまいます。その結果、心を閉ざしてしまい、うつ状態になってしまうことがあります。

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認知症は本人との接し方によって、症状をやわらげることもできます。認知症の人は言葉や態度で急かしたり慌てさせたりすると、パニックに陥ってしまうことがあります。ゆっくりと本人のペースに合わせましょう。

認知症の人に「絶対にやってはいけない」7つの対応

認知症の人に対して、絶対にやってはいけないといわれている対応は次の7つです。

 

【1. 叱る】

認知症の症状が進んでも、本人の羞恥心やプライドは以前と変わりません。その点を理解して、尊厳を守ってあげるように対応しましょう。

 

話しかけるときの大原則は、否定しないことと叱らないことです。本人が不適切な行動をとったとしても危険な行動でない限り、頭ごなしに否定したり大声で叱りつけたりしてはいけません。感情的に叱らないことで本人のプライドは守られ、安心して過ごすことができるのです。

 

【2. 命令する】

認知症の人を目の前にすると、「〇〇して」と命令口調で話したり、無理に何かをやらせようとしたりしてしまいがちです。しかし、できないことをさせようとしても難しく、かえってストレスを与えることになってしまいます。本人が興味を持ってできること、楽しめることをさりげなくサポートするのが良いでしょう。

 

【3. 強制する】

認知症の進行を抑えたいと願う家族が、脳トレなどを半ば強制的にさせようとすることがあります。本人が好きで取り組むのなら効果があるかもしれませんが、「こんな子どもがやるようなものを」とプライドが傷つき、心を閉ざしてしまうこともあります。

 

また、計算ができない、漢字が書けないなど、以前はできていたことができなくなったと気づいてショックを受けてしまい、逆に悪影響を及ぼしてしまう可能性もあるので注意が必要です。

 

【4. 子ども扱いする】

周りからのお世話が必要になっても、認知症の人にはしっかりと生きてきた歴史があります。人生の先輩に対して、小さな子どもを相手にするような言葉づかいやタメ口で話しかけるのはプライドを傷つけることになります。子ども扱いはせず、尊厳をもった態度や言葉づかいで接することを心がけましょう。

 

【5. 行動を制限する】

認知症の問題行動として、外へ出て歩き回る「徘徊」などがよくみられます。実際は本人にとって意味のある行動なのですが、いつのまにか外へ出て迷子になったりするので家族は困ってしまいます。そこで家の中に閉じ込めようとすると、今度は無理やり外に出ようと危険な行動や手段に走ることもあり、逆効果です。短時間でも一緒に散歩などをすると、落ち着くことがあります。

 

【6. 役割を取り上げる】

本人が長年やってきたことがうまくできなくなっても、「もう無理でしょう」「時間がないから」などと理由をつけて取り上げてしまうのはよくありません。本人にやろうという意欲があるなら、できることをやり続けられるように見守りましょう。

 

【7. 何もさせない】

物事がスムーズにできないとき、「どうせできないんだから」「触らないで」などと排除してしまうと、「自分は何もできない」と落ち込み、精神的に不安定になってしまいます。やれそうな作業を少しずつ手伝うなど、一緒にできることを見つけましょう。

 

 

認知症になると、理由は忘れてしまっても、そのときの感情はしっかり覚えています。「この人に怒られて嫌だった」「何もさせてくれない」といったネガティブな感情はずっと残ってしまうので気をつけましょう。

 

 

浦上 克哉

日本認知症予防学会 代表理事

鳥取大学医学部 教授

 

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    日本認知症予防学会 代表理事
    鳥取大学医学部 教授
    日本老年精神医学会理事
    日本老年学会理事
    日本認知症予防学会専門医 

    1983年に鳥取大学医学部医学科を卒業。同大大学院の博士課程を修了し、1989年より同大の脳神経内科にて勤務。2001年4月に同大保健学科生体制御学講座環境保健学分野の教授に就任。2005年より同大の医用検査学分野病態解析学の教授を併任。2022年4月より鳥取大学医学部認知症予防学講座教授に就任。2011年に日本認知症予防学会を設立し、初代理事長に就任し現在に至る。

    著者紹介

    連載認知症研究の第一人者が教える、認知症を予防・克服する新習慣

    本連載は浦上 克哉氏の著書『すぐに忘れてしまう自分が怖くなったら読む本』(徳間書店)の一部を抜粋し、再編集したものです。

    すぐに忘れてしまう自分が怖くなったら読む本 認知症を予防・克服する新習慣!

    すぐに忘れてしまう自分が怖くなったら読む本 認知症を予防・克服する新習慣!

    浦上 克哉 監修

    徳間書店

    【認知症研究 第一人者、浦上克哉氏の最新メソッド!】 「ひょっとして認知症?」…あなたや家族が不安になったら読む本。 早期発見チェックリストで今の状態とやるべきことがよくわかる! 自分自身や家族の認知症が…

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