(※写真はイメージです/PIXTA)

富裕層が海外の金融機関やプライベートバンクを利用する際、いくつか注意すべき点があります。本記事では、それらについて平易かつ簡略に解説していきます。資産防衛のプロであるウエルスマネージャーが解説します。

日本国内での「納税」に伴うわずらわしさも

海外の金融機関やプライベートバンクの収益は、日本や現地で申告をして納税する必要があります。

 

香港、スイス、シンガポールの金融機関やプライベートバンクは、現地での税金はほぼかかりませんので、現地の税理士などとやり取りすることはまずないと思われます。

 

その代わり、日本で所得を申告します。通常、ベースの書類は英語なので、ある程度英語がわかる税理士に頼む、もしくは、自身で日本語の書類を用意することになります。

 

また、アメリカにおいてもほぼ現地での税金はかかりませんが、数年ごとに非居住者であることを申請しておかなければなりません。これを怠ると、相当の額が源泉徴収されてしまい、取り戻すために一苦労する事になります。また一部の収益(株の配当等)には源泉徴収がされるので、こちらも要注意です。

 

@pixabay
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さらには、預けている国を問わず、日本国内で申告するためには、外国有価証券の売買時に毎回為替の評価等が必要となるため、膨大かつ複雑な計算をして所得を算出しなければならないケースもあります。

 

円以外の外国通貨建ての有価証券を売買した場合は、どの国でも同様の扱いとなりますので留意して下さい。

 

さらには、顧客情報自動交換システム(CRS)により、口座を持っている国から毎年自動的に口座の情報が日本に送付されてきます。その結果として目立ってしまい、税務当局の目に留まる、という可能性もデメリットとして上げられるでしょう(因みに先進国では唯一米国はこのシステムには入っていません)。

相続発生で立ち回りを間違えると、資産没収の憂き目に

また、相続の発生、例えば口座に対して指示を出す権限を持つ人が万が一死亡、または署名不能になってしまった場合に備え、しっかりと事前対策をしておく必要があります。

 

多くの国では、相続が発生しそうな事象が金融機関やプライベートバンクに認識されると、相続協議中の状態になり、資産を凍結されてしまうことになります。そうなると、弁護士を雇って裁判所に判断を仰がない限り、資産を没収されてしまう可能性も出てきます。これを避けるためには、事前に色々な対策を講じておく必要があります。

 

対策を怠ると、時間や手間がかかるだけではなく、弁護士費用など想定をしていない金額がかかることになります。

 

従って、この部分は当初からある程度しっかりと対策を練っておく必要があるのです。

詐欺や流用、怠慢、任務不履行などのトラブル

海外の金融機関やプライベートバンクを利用する上での最大の懸念点は、詐欺や資金・資産の流用、業務上の怠慢、任務不履行といったトラブルが発生したケースです。

 

普段から、スムーズに物事が運んでいれば気づきませんが、いったんこれらのトラブルに巻き込まれると、対処は想像以上に難航します。国際金融において信用のない国のプライベートバンクや金融機関には要注意です。

 

しかしながら「詐欺もどき」のトラブルばかりとは限りません。担当者の善管義務違反、作為・不作為による過失なども含まれてきます。現状は不明ですが、過去はスイスに、日本人用の「ぼったくりレベルの料金設定」をしているあくどいプライベートバンクもありました。

 

日本国内であれば、担当者等に直接会って話すことも比較的容易ですが、距離のある外国ですから、直接会って担当者に解決に辿り着くのは簡単でありません。

 

普段のコミュニケーションで、相手がタイムリーにレスポンスを返すのが当たり前だと思って安心していても、一旦コミュニケーションが滞ると、不安感が募って厄介さが身に染みるのではないでしょうか。

 

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こういった問題はそこまで頻繁に起きるわけではありませんが、もしにっちもさっちも行かなくなると、やはり現地に出向かねばならないということは、よく理解しておく必要があります。そこまでの状況になると、今度は「現地にどれだけ信頼できる人間がいるか」という点が重要になってきます。

 

このように、日本人の担当者が居れば、ある程度は問題をカバーすることも可能ですが、担当者が辞めたり、担当者自身が何らかの問題行動をとっていたりする場合は、それなりの英語力があっても――後任の担当者が日本人でなかった場合はとくに――こちらの真意が伝わりにくく、非常にフラストレーションの溜まる状況になる可能性が高くなります。

 

ちなみに、百万ドル未満の資産では、トラブルが起きた場合に「コスト負け」してしまうことから、現地の弁護士も雇えないというケースも想定しなければなりません。とくにスイスのような物価の高い国では、どれほどの弁護士費用がかかるかも、よく理解しておく必要があります。

 

それぞれ国の、金融機関やプライベートバンク規制・監督庁にクレームをつけたとしても、簡単に動いてもらえないということも、同様に理解しておきましょう。

 

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このように、さまざまな注意点やリスクがありますが、それ以上の海外の金融機関やプライベートバンクに口座を持つメリットがあると言えるでしょう。
 

 

遠坂 淳一

株式会社 ジェイ・ケイ・ウィルトン・インベストメンツ 代表取締役

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