「英語がよくわからない」ことを逆手に取られ…
海外の金融機関やプライベートバンクを利用する上で、もっとも気を付けなければならないのは「使用される言語」です。日本国外の金融機関やプライベートバンクを利用するわけですから、当然外国語がコミュニケーションのベースとなります。
たいていの国の金融機関やプライベートバンクは、国外顧客に対して英語を公式な言語とし、英語でコミュニケーションするのが通常です。
書類においても、その金融機関やプライベートバンクが定めた公式言語で記載されたものが正式となります。仮に日本語などの翻訳が付いていたとしても、それらはあくまでも参考であり、公式言語で書かれていた内容と齟齬があれば、公式言語で書かれた書類が優先されます。
特に気を付けるべきなのは「顧客が英語をよく理解できない」という事実を逆手に取るケースです。銀行、銀行員、または第三者が、顧客に説明していない書類へサインさせる例が過去に多数起きています。
例えば、口座に預けている現金、株や債券に、知らぬ間に質権が設定され、つまり勝手に担保として差し入れられて、第三者によって資金が引き出されていた(融資を受けていた)という例があります。
海外では「騙す方も悪いが、騙される方も同等に悪い」と考えますので、その点は留意が必要です。契約行為は、双方が納得の上で行われたものであり、あくまでも自己責任が原則です。質権設定の書類に顧客の署名があれば、金融機関やプライベートバンクには基本的に責任はありません。
このケースの場合、表面上、口座にはすべての資産がそのままあるため、なかなか質権が設定されていたことに気付けなかったのですが、いざ現金や有価証券を動かそうとした際に、時間がかかったり、今までなかった手続きを踏んだりといったことから違和感を覚え、改めて担当者を問い詰めた結果、質権設定が発覚しました。
英語が得意でなくても、残高証明書等や簡単な書類は、慣れればある程度理解することはできるでしょうが、契約関連の書類に関しては、たとえ慣れていても理解は難しいものです。
従って、認識していないことが発生して料金が課せられていても、その理由や原因の把握は容易ではありません。
海外の金融機関やプライベートバンクを利用する上では、外国語、とくに英語の理解度がかなり高くない限り、例に挙げたようなトラブルをゼロにするのはなかなか難しいものです。
また、日本と異なるのが、どんなに詐欺的なプロセスであっても、書類に署名をすると、内容の理解に関係なく、書かれている契約内容は100%有効となる点です。
「騙された」「理解していなかった」といった理由は一切認められません。署名をしてしまえば、その書類を受け入れたことになるのが常なのです。
このようなことが起きると、やはり信頼のできる日本人担当者や専門家が必須になってくるのです。