登場人物・用語紹介
西田:西田明日美。入社2年目のコンサルタント。
堀金社長:堀金賢吉。堀金製作所2代目代表取締役社長。40歳になったばかりだが、会長である父に経営権を一任され、経営改革を計画している。
峰岸課長:峰岸春香。堀金製作所営業課長。30代前半で、WEB担当を務める。
堀金製作所:誰もが知っている商品をいくつも製造・販売している刃物メーカー。ユーザーは法人、個人を問わない。
ユーザビリティ調査報告:WEBサイトの診断結果。前回記事(『アクセスが少ないBtoB企業のWEBサイトに共通する「問題点」』)で、堀金製作所に対して西田が報告を行った。
WEBマーケティングの導入を少数精鋭で進める方法
WEBマーケティングの導入プロジェクトを開始するといっても、多くの中小企業は人材不足で二の足を踏むことになります。しかし諦めないでください。BtoB企業におけるWEBマーケティングの導入は、実は少数精鋭のチームで進めることができます。
ただし、いくつか条件があります。第一は、複数のフェーズに分けて無理なく段階的に進めること。次に、初期フェーズにおいては経営者がしっかりと関与すること。さらに、最低1人でかまわないので専任要員をアサインすること。そのうえで、「伴走」してくれるパートナー企業を見つけることです。
WEBマーケティングの予算設定はどのように行うべき?
――ユーザビリティ調査報告の内容が好評を得て、私たちは堀金製作所のWEBサイトリニューアル支援の提案を依頼された。それから1週間後、堀金製作所の役員会議室で西田はプレゼンテーションを行っていた。
堀金製作所側のメンバーはユーザビリティ調査報告のときと同じ、堀金社長と峰岸課長である。定番の会社紹介が終わり、要件の確認に入ったところだ。
「まず予算についてですね。WEBマーケティングにおいては予算も大事なポイントです」
WEBマーケティングを導入するといっても予算をどうやって、またいくら捻出したらよいかわからないという経営者やマネージャーは多い。
「WEBマーケティングを始めるぞと意気込んでも、お金が天から降ってくるわけではないので、銀行から借りるかすでにある予算から捻出するしかありません。広告宣伝費の一部をWEBマーケティングのための予算に充てることが多いですが、まずは1割ぐらいを上限として始めます。
とはいえ根拠が必要です。そのためにはまず優秀な営業マンが月に平均で何件ぐらい見込み客を獲得しているか、その単価はどれぐらいになるかを計算します。正確に計算するのは難しいので、大まかで問題ありません。
人件費として月80万円の営業マンが毎月8件獲得しているとしたら、すべてが見込み客の獲得費用ではありませんから、1件あたり5万円ぐらいという見当になります。それをツールで行うなら、ツールの運用コストとしては1件あたり2万円ぐらいが目標としては適正ではないかと思われます。
ツールで獲得する見込み客の目標として月10件とするならば、月額20万円、年間240万円という計算になります。これはツールの運用費の予算であり、そのほかにも導入費用、社内スタッフの人件費などもかかってきます。
それらを積み上げれば、年間コストが計算できることになります。実際の取り組みを見る限り、年間何千万円もかかることはないようです。大切なことは、目標ありきで予算を決めていくことです」
「なるほど」と、峰岸課長がメモを取りながら頷いた。
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