歴史と株価…いま再び大きく変化する「日米関係」
日本の歴史を規定してきた地政学(=世界のスーパーパワーとの関係性)
長い目で経済と市場を考えるとき1番大事なことは「地政学、換言すれば世界を統治するスーパーパワーとの関係性である」というのが当社の一貫した主張である。この地政学環境が第二次安倍政権の登場とともに劇的に変わった。
[図表1、2]は日本の地政学レジームと株価推移であるが、近代、明治・大正の繁栄を支えたのは日英同盟であった。
しかしアメリカ、イギリスを敵とした戦争に負けてすべてを失った(1945年)日本が再び大きく飛躍したのは1950年の朝鮮戦争と冷戦の勃発以降である。
サンフランシスコ講和条約(1951年)以降日米同盟のもと、1950年から1989年にかけての40年間に日経平均株価は400倍(年率16%)と大きく上昇した。この大繁栄の背後にあったのは、アメリカのアジアにおける自由主義の砦としての日本に対する継続的な経済的サポートであった。
しかし1990年を前後して冷戦が終わり、日本のアジアにおける自由主義の砦という役割は失われた。
1990年から2010年頃までの20数年間は、経済産業の面で著しく力をつけた日本をアメリカは脅威とみて、日本叩きを推し進めた。このアメリカの日本叩きそしてその手段として実現した超円高の結果、日本は失われた30年という長期停滞に入ったといえる。
この平成の30年間、日本の株価は2割強のマイナス、アメリカその他の国では約10倍に株価が上昇するなかで日本のひとり負けが顕著になった。
この失われた30年の背後にあったのは日本とアメリカの関係性の変質である。つまり日本を守る日米安保体制から異常に強くなった日本を抑えるための安保体制、いってみれば安保瓶の蓋の時代といってよい。
しかし日米関係はいま再び大きく変わっている。米中対立が決定的となり、中国を抑止するための同盟、日米同盟の第3段階に入っている。中国がアメリカにとっての最大の脅威であり、中国抑え込みのためには、日本が最も重要な盾となる。
日本は世界最強のアメリカの最も大切な同盟国となったのである。それによる大きな追い風が、今後の日本経済を大きく押し上げていくと思われる。
中国の危険性を見誤っていたアメリカの「変わり身」
米中対立を予見し、アメリカに対して「自由で開かれたインド太平洋」構想の構築を働きかけたのが安倍元首相である。2012年第二次安倍政権誕生の当初は、尖閣問題で対立する中国は、安倍氏を戦後の世界秩序を否定する国家主義者と指弾して、米中連携での対日批判を試みた。
しかし、オバマ政権、トランプ政権は中国の危険性の認識を強め、安倍氏の先見性を尊重するようになった。
専制国家と自由主義国家の対立の時代を予見し、自由主義の盟主であるアメリカとの関係強化を打ち出したという点で、安倍氏は世界の指導者のなかで最も先見性があったといえる。
中国を排除したグローバルサプライチェーン構築のために、超円高を求めてきたアメリカが、いま超円安を容認している。これによりハイテク・半導体などでの日本の価格競争力が復活し、日本国内においては著しく割安になった賃金の引き上げが始まるものと思われる。
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