2023年は米経済の「立ち直り」が期待できる
米経済長期繁栄の条件…技術・イノベーションと需要創造は健在
今後の世界経済を展望するうえで、アメリカ、中国、ドイツに主導されるユーロ圏についてコメントしておきたい。
安倍政権が希求した日米同盟の強化、自由主義国家の連携と中国・北朝鮮・(ロシア)など専制国家への圧力強化という戦略が妥当かどうかは、米・中・独の将来評価にかかっているからである。価値観からみて望ましい相手とみて連携を強めても、経済力が伴わなければその関係は持続性がない。
安倍氏が関係強化に腐心した米経済は、これから先はたして強化されていくのだろうか。
[図表3]に示したものは過去120年間のアメリカの株価上昇トレンドである。このような100年間に及ぶアメリカの長期成長が持続できるかどうかということの見極めが大事である。
長期に経済を繁栄させるための第1の条件は、技術とイノベーションの発展、およびその結果もたらされる生産性上昇の持続性である。この点でいまのアメリカは条件が満たされているといえる。
第2の条件は、持続的な需要の拡大である。技術が発展し生産性が高まるということは供給力が増えていくことと同義であり、増えた供給力に対して需要が追い付かなければ需要不足によりデフレギャップが拡大し、大恐慌に陥ってしまう。
いまアメリカはじめ先進国経済はまさに需要不足の渕にあるといってよい。50年前のアメリカのリーディングカンパニーはGMやGEであるが、これら企業は儲かると工場を拡張し雇用を増加させ、次の需要拡大循環を引き起こしてきた。
しかしいまのリーディングカンパニーであるアップルやグーグルは、儲かっても設備投資もしないし雇用もさほど増やさない。膨大な企業利益が需要創造、経済の拡大循環に結び付かないのである。
その結果、企業の余剰は金融市場に滞留し、著しい低金利を引き起こしている。
アメリカで起きている「いいインフレ」が経済の立ち直りに寄与
正しい解決策には、生産性以上に労働賃金を引き上げ、家計消費を持続的に増加させることである。そのためには、適度のインフレが必要であるが、いまのアメリカでそれが起きている。
2015年くらいを底にして労働分配率が上昇し、またユニット・レーバーコストも上昇に転じている。こうした動きは、賃金上昇による消費の増加、格差の縮小、資本退蔵の解消という観点から望ましいことである。
現在、アメリカではインフレを抑制するための金融引き締めが行われている。しかし同時にアメリカ政府と中央銀行は、オーバーキルを回避し、いいインフレが継続するように尽力するだろう。2023年には米経済の立直りが期待できよう。
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