(※画像はイメージです/PIXTA)

近年、建設需要の増加により、業界は好景気の明るい見通しです。しかし、これが中小規模の建設会社にとって追い風になるかは疑問です。大手と中小間で利益格差が生じ、逆風に転じる可能性を十分に秘めているからです。原価管理システムの開発・提供をしている三國浩明氏が、生き残りをかけて、さまざまな見直し・改革が必要な建設会社に必須の「原価管理術」を解説します。

小起業は受注件数に深刻な影響が。事前準備は必須

発注する側だけでなく、下請けにとっても「インボイス制度」は非常に悩ましい問題をはらんでいます。「インボイス制度」が始まると、特に小規模の建設会社は受注が減ってしまう可能性があるからです。

 

その理由は、適格請求書でなければ消費税の仕入税額控除ができないことにあります。

 

下請けが適格請求書に対応していないと、発注する元請け会社が損を被ってしまいますから、仕事を発注する会社には「適格請求書を発行してくれる下請けを優先しよう」という判断基準が生まれます。

 

相手方が適格請求書発行事業者かどうかで自社の消費税負担が変わるわけですから、これも致し方ないのかも知れません。

 

つまり適格請求書を発行していない事業者は取引から排除される恐れがあるのです。

 

しかも適格請求書を発行できる会社は「適格請求書発行事業者」として国税庁のホームページで申請した際に発行された登録番号のみで管理されています。

 

取引したい相手を探すときに会社名では検索できないため、そもそも番号がない会社はそうでないことがすぐに明らかになってしまいます。

一人親方は課税事業者へ転身するか否かの検討が必要

もうひとつ覚えておきたいのは、消費税を免税されている事業者はそもそも適格請求書発行事業者になれない点です。

 

原則として年間売上1000万円を下回る事業者は消費税の免税事業者となり、消費税の申告や納税を免除されています。

 

小規模の建設会社や一人親方は消費税の免税事業者であることが多いかもしれません。このような免税事業者は、「インボイス制度」が本格運用されるとこれまでより受注を取りにくくなる可能性も否定できません。

 

こうした事態を避けるための対策として、免税事業者であっても「消費税課税事業者選択届出書」を所轄税務署長に提出して課税事業者になるという方法があります。

 

しかしこの方法を使うと、年間売上1000万円未満であってもそれまでのように消費税が免税されなくなります。すなわち小規模建設会社や一人親方はそれまで必要のなかった消費税の納税が必要になるということです。

 

原則として、1年間で受け取った消費税から支払った消費税を差引き、納税を行わなくてはなりません。

 

「インボイス制度」は発注する側、受注する側のそれぞれに影響が及びます。

 

細かい法律が関係しますので、対策を取るときは顧問税理士などに相談しつつ慎重に検討する必要があります。

 

なお「インボイス制度」がスタートするのは2023年10月1日ですが、その後6年間の経過措置が設けられています。この経過措置の期間は免税事業者に発注した場合であっても一定の条件を満たせば仕入税額控除が一部認められます。

 

この期間を有効に使い、適格請求書を発行できるシステムを導入したり、取引先の選定を行ったりといった対策を取っておくべきです。

利益を生み出す建設業のための原価管理術

利益を生み出す建設業のための原価管理術

三國 浩明

幻冬舎メディアコンサルティング

大手電器メーカーのコンピューター販売部門に30年間務めるなかで、建設会社への原価管理システム供給の必要性と将来性を感じ、起業。業界導入実績ナンバーワンを記録した、原価管理システムを提供している著者が、長いキャリア…

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