モンゴル伝統料理には「屋台販売」の概念がない
屋台料理は、その国の人々や歴史、文化をより深く理解するための入り口となる。世界には素晴らしい屋台料理のある都市がたくさんあり、各都市それぞれに独自の料理スタイルや種類、販売方法、食のトレンドが存在する。大都市ではすでに大きなビジネスとなっているが、モンゴルでは未だに独自の屋台文化を発展させようと模索中だ。
モンゴルには、伝統的な料理や飲み物を専門に扱う屋台が非常に少ない。
1990年に一党独裁政権が崩壊し自由化が始まると、路上で小売りをする人が出てきた。夏になると串焼き、サンドイッチ、飲み物、アイスクリーム、風船ガム、キャンディーなどを販売する個人や企業の屋台が見られるようになった。しかし残念ながら、モンゴルの文化を取り入れ、観光客を呼び込む可能性のある商品はあまり路上では売られていない。
モンゴルの伝統的な屋台料理であるクシュールは、ナーダム(民族の祭典。モンゴル国において年に数回行われる国民行事)と強い結びつきがあるため、祭りの際には外国人観光客から最も多く食されている。
クシュール以外にも、アイラグ(雌馬の乳を発酵させたモンゴルの伝統的なアルコール飲料)、ボルツ(干し肉)など、民族固有の良質で安価な食べ物を屋台文化として発展させ、国民に普及させていくことは重要だ。また、このことは地域住民への食料供給だけでなく、モンゴル文化を世界に広めることにもつながっていくだろう。
首都・ウランバートルではどうかというと、現状、同市にもナイトマーケットや屋台の専門エリアはない。しかし、祭りの際にはフードトラック、フードホール、ポップアップイベント、(モンゴルで)流りのフードコート内では屋台料理を見つけることができる。
2017年から2020年まで、夜のソウル通り(ウランバートルの繁華街)は車両通行禁止のナイトストリート(歩行者天国)となっていた。そこではさまざまなアートパフォーマンスやダンス、歌のコンテスト、食品の販売などが行われていた。自営業者や企業を支援し、市民を楽しませる環境を整えたのだ。本来ならより拡大すべきだったのだが、ソウル通りで活動する屋台は現状、数軒にとどまっている。
ウランバートル観光局のD.Batsukh局長は次のように話す。「ナイトストリートは観光振興のためにつくったもの。今後は観光客だけでなく、ウランバートルの住民や子供たちが文化的パフォーマンスや美味しい料理を楽しむ憩いの場としても拡大していきたい」。