超高齢社会となった日本……「65歳以上の5人に1人が認知症」という現状は、大きな社会問題となっています。そこで元気なうちに必要となってくるのが「老後の相続対策」です。およそ2,023兆円といわれる日本の家計金融資産を守るため、一人ひとりができる相続対策について、永田町司法書士事務所の代表加陽麻里布氏が解説します。

「法定後見」…家庭裁判所が後見人を選定

法定後見制度とは、認知症になっているなどもうすでに判断能力がなくなってしまっていた場合に、4親等内の親族などが家庭裁判所に申し立てを行い、後見人が選任されるというものです。

 

最大のポイントは「誰が後見人になるかわからない」というところで、ここが任意後見とは大きな違いです。

 

後見人は親族になる場合もありますが、「弁護士」や「司法書士」といった職業専門家が就任するケースが多いです。親族が選任されるケースは、昨年のデータをみても全体の20%程度となっています。

 

もし親族が後見人になりたいと希望しても、親族との関係や状況に応じて判断され、兄弟同士仲があまりよくないということであれば、財産でトラブルにならない第三者が選任されるということがあります。

 

後見人選任後、この家庭裁判所の決定に関して不服を申し立てる手段はありません。

 

また、司法書士や弁護士が後見人に就任することになった場合、月々の報酬、つまりランニングコストがかかってしまうというデメリットがあります。

 

さらに、後見人がついたあとは、なにかしら財産に影響が出る契約をする際に後見人の許可がなければできませんので、預金等を第三者に管理されてしまうことに強く抵抗がある親族の方も少なくありません。

 

そのため、積極的な利用にはつながっていないというのが現状です。

 

まとめ

任意後見制度とは、判断能力があるうちに利用できる制度です。ご本人が元気なうちは報酬がかかりませんが、財産管理が必要となった場合に後見人・後見監督人に報酬を支払う必要があります。将来に備えていまから対策しておくことができます。

 

一方、法定後見制度は「すでに判断能力が低下している場合」に利用できます。誰が後見人になるかわからず、ランニングコストが発生する点は注意しておきたいところです。そのため、法定後見については「最終手段」という位置づけがいいでしょう。

 

任意後見・法定後見は、いずれにしても「全財産の管理を自分以外の人にお願いする」という制度です。

 

最近、このようなデメリットを考慮して「民事(家族)信託」を利用される方も増えてきています。民事信託では、裁判所を通さず、ランニングコストをかけずに一部の財産管理をお願いすることができます。

 

将来に備え、判断能力があるうちに任意後見や民事信託を利用し、対策を検討してみてはいかがでしょうか。

 

<<<「成年後見制度」のキホン……司法書士が動画で解説>>>

 

 

 

加陽 麻里布

永田町司法書士事務所

代表司法書士
 

 

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