近年大人気となっているインデックスファンド。GAFAMブームもあり、米国株・世界株インデックスへ大量の資金が流入しています。しかし一方で、企業そのものの評価が置き去りになるなど、懸念点もあるのです。※本記事は日野秀規氏の著書『米国株なんて買うな!インデックス投資も今はやめとけ! グローバル割安株投資』(ビジネス教育出版社)を抜粋・再編集したものです。

ここ10年は、金融緩和&インデックス投資の流行が並行

インデックス投資は、投資自体には大して興味はない人でも、手間なく気軽に資産運用ができる道を開きました。世界の株式に分散投資するインデックスファンドを毎月積み立ててじっと保有しているだけで、企業の良し悪し、相場の高低を気にする必要がなく、株式市場に(ほぼ)タダ乗りして有利な資産運用ができるという触れ込みは、誰の耳にも心地よく響きます。

 

この十数年は、金融緩和とインデックス投資の流行が並行して進みました。このことは、株式市場へ2つの株価上昇圧力となって働きました。1つは株式市場に入り込む資金が年々増加したことです。株式市場への継続的な資金流入は、慢性的な買い圧力として働きます。そしてもう1つは、個人投資家によるインデックス長期投資が定着したことです。売却される予定のない投資資金は、上昇していく株価を根雪のように固く支えることとなりました。

世界株式インデックスファンド、米国株購入が6割

インデックスファンドを通して株式市場に入ってくる資金は、当然のことですが、巨大企業を多く購入し、中小企業にはわずかな資金しか入りません。このことは国の単位で考えても同じことです。世界株式インデックスファンドに投じられた資金は、その6割が米国株の購入に充てられ、日本株への割り当ては10%を切ります。

 

株式投資家には、自国の株を他国株より多く保有する「ホームカントリーバイアス」があることが知られています。2014年のデータによると、平均的な日本の米国の投資家が保有する株式の55%が日本株です。これが米国になると79%まで上がります。米国の投資家はこのバイアスが強いのです。そして、機関投資家を含む米国の投資家は、世界一の資金量を誇ります。

 

GAFAMをはじめとする米国成長株は、米国の投資家が好んで投資する米国株インデックス(S&P500、NASDAQ100)によって支えられ、さらに世界株式インデックスに投入した資金の6割もサポーターとして働きます。この構図を図式化したのが(図表)です。

 

[図表]米国株を支えるインデックス投資

 

GAFAMブームが米国株・世界株インデックスへの資金流入を促し、それらに投じられた資金がGAFAMの高値を定着させ、さらなる資金流入を呼びます。たとえば金利上昇の気配など、成長株に対する悪材料が一時出たとしても、インデックス投資の買いが下支えとなり、米国成長株の上昇神話が続いていくという構図です。

「価値以上に株価が吊り上がる企業」が増加している

とはいえ、世の中にうまい話はありません。経済学に、「ノー・フリー・ランチ」というよく知られた言い回しがあります。直訳では「タダで食べられる昼食はない」となりますが、デメリットのないメリットはないという意味の比喩表現です。

 

インデックス投資の隆盛もまた、ノー・フリー・ランチ原則に突き当たります。

 

インデックスファンドは、アクティブな投資家がするように、企業の価値を評価しません。インデックス投資の隆盛によって、利益なり成長性なりといった企業の価値を見極めて、適切な株価で売買しようという意図がまったくない資金が株価を左右する時代になっています。このことは、価値以上に株価が吊り上がる企業が増えるという形で、ゆがみを蓄積させています。この状態を言い換えた言葉が、「バブル」です。前出の民主主義の例えで言えば、インデックス投資の隆盛は、国民がポピュリスト政権を信奉して、無批判に票を投じ続けているというところでしょうか。

 

米国株・成長株の神話は、インデックス投資の買い資金が止まり、逆回転を始まるまで続くでしょう。過去のバブルの歴史は、投資の資金は引く時は瞬く間に引いていくことを教えています。清算の時に、投資家は、叙々苑の高級ランチでは済まないくらいの高い昼食をむさぼっていたことを理解するのでしょう。

 

 

日野 秀規
個人投資ジャーナリスト
ファイナンシャルプランナー

 

 

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