近年では、低コストで投資できるインデックスファンドの人気が高まっています。ここでは、インデックスファンド誕生の背景と評価について見ていきます。※本記事は日野秀規氏の著書『米国株なんて買うな!インデックス投資も今はやめとけ! グローバル割安株投資』(ビジネス教育出版社)を抜粋・再編集したものです。

インデックス投資の基本をおさらい

まずはインデックス投資の基本をおさらいしておきましょう。

 

対象とする株式市場やその中の特定分野(小型株など)を、何らかのルールに基づいて保有比率を決めたポートフォリオがインデックス(株価指数)です。日本ならTOPIXが日本の株式市場を代表しており、銘柄数で国内株式市場の6割弱、時価総額で約96%をカバーしています。米国株の代表的なインデックスであるS&P500はおよそ500銘柄で構成され、時価総額で米国株の8割をカバーしています。米国成長株の動向を知るには、成長株が多く上場するナスダック市場を代表するNASDAQ100というインデックスを見ます。時価総額の大きい100銘柄で構成されており、GAFAMが時価総額で4割程度を占めています。

 

これらのインデックスに連動するファンドを利用した株式投資が、個人・機関を問わず近年では大きく伸びています。

インデックスファンド、アクティブファンドを上回る

GAFAMなどの巨大ハイテク企業は世界的に有名な存在ですが、その株式が個人投資家に気軽に取引されているかと言えば、必ずしもそうではありません。

 

米国株は1株単位で取引できますが、たとえばグーグルやアマゾンの株価は、1株で約35〜41万円と高額です(2022年3月29日現在)。長期的な資産形成を目的に、本業の片手間で比較的小さな金額で投資をしている層にはハードルが高い金額といえます。

 

そこで、多くの個人投資家がファンドやETF(株式市場で取引される形式のファンド)を利用しています。特に近年では、低コスト(1年間の信託報酬が0.1%程度)のインデックスファンドが長期の運用成績でアクティブファンドを上回るという研究結果が広く知られるようになり、年を追うごとに人気を博してきました。

 

機関投資家は個人投資家と違い、資金不足という制限はありません。ただし個人とは逆に、運用額が大きいことが個別株投資の足かせとなる部分があります。多額の資金で個別株を購入するとあっという間に株価が上がってしまうので、分散投資が必須なのです。機関投資家も超低コストのETFや先物などを利用してポートフォリオ運用を行っており、巨額の資金がインデックスに連動する形で投資されています。

 

米国モーニングスターの調査によると、2021年6月までの1年間で、米国のファンドやETFに流入した資金のうち、インデックス投資商品が73%を占めていました。この傾向は年々強くなっているといいます。

同じ銘柄への評価も、投資家によってそれぞれ違う

ここで少しわき道にそれて、株式市場とは本来どういう場所なのか? ということを考えてみます。

 

株式市場は、株を買いたい人と売りたい人が、それぞれの思惑を込めた取引金額を提示し、それらをつき合わせて合意を作ることで株価が決められる場所です。

 

企業の業績や経済ニュースなどは投資家の思惑を左右します。たとえば業績ダウンが発表された銘柄には売りが殺到して株価が下がったり、ある企業のビジネスに有利な出来事が報道された際には、業績アップを見込んだ買いが集まって株価が上がったりします。

 

ここで重要なのは、情報の受け止め方が投資家によって異なっていることです。悪いニュースを悲観して保有銘柄を叩き売る投資家が見つめる画面の向こう側には、安く買えるチャンス到来とばかりに、ウキウキで買っている投資家がいます。

 

さまざまな立場の、考えの異なる投資家の意見表明を刻一刻とマッチングさせていく株式市場は、大勢の議員による議論百出の後に、投票で議案を決定していく議会場によく似ています。民主主義的な手続きで決められた株価(時価総額)は、現時点での、社会にとってのその企業の価値を表しています。

長期的に効率よく資産を増やせるインデックスファンド

本来、株式市場に参加して儲けるためにはコストがかかります。投資家は投資対象となる企業をピックアップして調査し、購入の決断を行い、保有する間は株価の上下動によるストレスに耐え、清水の舞台から飛び降りる気持ちで売りを決断します。この一連の流れは投資家にとっての莫大なコストであり、長く未経験者を阻む参入障壁となっていました。

 

そこに、インデックスファンドという投資手法が登場します。株式市場の姿をそのままマネする、つまり上場している企業を時価総額に比例する割合で組み入れたインデックスに連動するファンドを通じた運用こそが、長期的には、効率よく資産を増やすことができる方法であるという考え方が生まれました。その根拠を提示した二人の学者はノーベル経済学賞を受賞しています。

 

実際のところ、株式市場で利益を得るために大きなコスト(信託報酬1〜2%)をかけて運用されているアクティブファンドの多くが、インデックスファンドに運用成績で負けていることが調査研究で明らかになっていきます。インデックス提供会社のS&Pダウ・ジョーンズが毎年調査結果を発表していますが、運用期間の長短を問わず(1年程度の短期~10年の長期まで)、世界のどの地域でもおおむね6割~9割のアクティブファンドが、インデックスファンドの運用成績を下回っています。今や、アクティブ運用の存在価値すら問われかねない状態です。

 

 

日野 秀規
個人投資ジャーナリスト
ファイナンシャルプランナー

 

 

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