恐ろしい…国民年金の「未納期間」がもたらす、年金受給額への深刻な影響【CFPが解説】

恐ろしい…国民年金の「未納期間」がもたらす、年金受給額への深刻な影響【CFPが解説】

会社員や公務員は公的年金が給与天引きされますが、自営業者、自営業者の配偶者、無職の方といった、いわゆる第1号被保険者の方は、国民年金を自ら納付するスタイルが基本です。その場合、納付を忘却してしまう、手持ちのお金がない等の事情により「未納期間」を発生させてしまうことがあります。国民年金の未納期間が、将来の年金受取額にどれほどの影響を及ぼすのか、実際の数字を検証します。

未納期間があり、〈ねんきん定期便〉を見るのが怖い…

「私には、国民年金の保険料を納めていない期間があります。先日『ねんきん定期便』が送られてきたのですが、未納期間が年金額にどれほど影響があるのか、どれぐらい年金額が減らされるのか想像がつかないため、恐ろしくて『ねんきん定期便』を見られないでいます…」

 

そのように語るのは、59歳女性Bさん。

 

実際、同様のお悩みを多くの方からお聞きします。見たくない現実から目を背けてしまう、これを心理学用語で「オストリッチ(ostrich=ダチョウ)効果」といいます。

 

オストリッチ効果とは、自分にとって望ましくない状況の時に、その状況についての情報を得ようとしないことをいいます。ダチョウは敵に襲われそうになると、土のなかに顔を突っ込んで見なかったことにするという俗説から、このように名付けられました。

 

しかし、公的年金はリタイア後の大切な収入源です。どれほど知ることが恐ろしくても、ダチョウのように目を背けていてはダメです。

 

「年金額なんか気にしなくても、余裕で老後生活が送れる!」という人以外は、事前に受取れる年金額を把握し、リタイア後の生活が困らないよう、対策を打っておく必要があります。

 

それでは、「未納」期間がある場合、老後に受取る年金にはどんな影響があるのでしょうか?

 

大きく分けると、次の2つの影響があります。

 

①将来年金がもらえない可能性がある

②もらえる年金額が減る

 

それでは1つずつ見ていきましょう。

 

①将来年金がもらえない可能性がある

65歳から国民年金を受取るには、10年(120ヵ月)以上、年金保険料を納める必要があります。会社員(公務員)の期間が10年以上あれば、厚生年金保険料と共に国民年金保険料も給与天引きで納めているので問題ありませんが、これまで会社員(公務員)として働いたことが無い場合で、国民年金保険料の未納期間が長く、納めた期間がトータルで10年に満たない場合、たとえ9年11ヵ月納めていたとしても、老後に年金は受取れないので注意が必要です。

 

さらに注意が必要なのが、会社員(公務員)であった期間が10年に満たず、それ以外の期間、国民年金保険料を納めていない場合です。厚生年金は1ヵ月以上保険料を納めれば受取れる年金ですが、そもそも国民年金の受給資格(保険料納付10年以上)を満たしていないと、厚生年金も受取れないのです。となると、会社員(公務員)であった期間、年金保険料は給与天引きされている為、この時支払った保険料は払い損になってしまいます。

 

②もらえる年金額が減る

65歳以降、いくら国民年金を受取れるかというと、次の式で計算できます。

 

77万7,800円×納付期間分/480ヵ月

(令和4年度の場合)

 

令和4年度の場合
令和4年度の場合

 

つまり、40年間すべて納付した人であれば、令和4年度は「77万7,800円」受取れるということです。

 

それでは未納期間1年につき、どれぐらい年金額が減るかを確認しましょう。

 

39年間=468ヵ月なので、先ほどの式に当てはめると、

 

77万7,800円×468ヵ月/480ヵ月=75万8,355円

 

1年間、保険料が未納だった場合の年金支給額
1年間、保険料が未納だった場合の年金支給額

 

受取れる年金額は、「75万8,355」円になるので、満額の77万7,800円と比べて、年間19,455円、月にすると1,620円減額されます。1年未納期間があると、約2.5%年金額が減額されるということです。しかも、一生涯減額されたままです。国民年金は、ただでさえ金額が少ないなかでの減額です。なかなか厳しいといえるのではないでしょうか。

 

未納期間と減額される金額をまとめましたので、未納期間がある方はご自身がどれぐらい減額されるのか、確認してみてください。

 

[図表2]未納期間別、減額される金額

もらえる年金額を「満額に近づける方法」がある!

それでは、未納期間がある場合、どうしようもないのでしょうか?…いいえ、諦めるのはまだ早いです。もらえる年金額を満額に近づける方法があります。

 

①2年以内の未納保険料を納付する

年金保険料の納付期限は、納付対象月の翌月末日ですが、納付期限から2年間は保険料を納めることができます。

 

②任意加入制度を活用する

以下の条件を満たす人は、60歳以降も国民年金の保険料を納めることで受給資格期間や年金額を増やすことができます。

 

●日本国内に住所がある60歳から65歳までの人

●老齢基礎年金の繰上げ受給をしていない人

●60歳未満までの国民年金保険料納付月数が480ヵ月未満の人

●厚生年金などに加入していない人

 

※国民年金の受給者資格期間を満たしていない場合は、65歳以上70歳未満の人も任意加入制度を利用できます。

 

③追納する

納付猶予や学生納付特例を受けた期間がある場合、10年に遡って追納(保険料を納める)ことができます。

「第1号被保険者」の方は、ぜひ一度確認を

国民年金保険料の未納期間がある人でも、上記制度が利用できる場合は、年金額を満額に近づけるチャンスがまだあります。ぜひこれらの制度を活用してみてください。ちなみに、60歳以降も会社員として働いて厚生年金保険料を納めることでも、国民年金の年金額を増やせる場合があります。

 

会社員(公務員)であれば、国民年金の保険料は給与天引きされるので、基本的に未納は発生しません。

 

未納の可能性が高いのは、保険料を自分で納めなくてはいけない、自営業者や自営業者の配偶者、無職の方など、第1号被保険者の方です。また、20歳以降の学生であった期間も、「未納」となっている方が多いので、ねんきん定期便などで、ご自身の「未納」期間の有無を、一度確認してみてください。

 

 

高木 智子
ヨージック・ラボラトリー CFP

 

 

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