前回は、所有アパートが「事故物件」となったときの費用などを見てきました。今回は、アパート経営における資金調達の注意点を説明します。

変動金利を選んでも、あとから固定への変更が可能

サラリーマンがアパート経営をはじめる際の資金調達方法は、ほとんどが金融機関からの融資となるはずです。このときに多くの人が迷うのは変動金利にするか固定金利にするか、そしてどこの金融機関にローンの申込をするかです。

 

結論から言えば、金利に関しては、変動を選ぶべきです。金利は10年ほど前から「今が底」と言われ続けてきました。このうたい文句に乗って住宅ローンを組んだ人は多いのではないでしょうか。

 

しかし、その後も下がり続け、現在住宅ローンの変動金利は金利1%以下が当たり前になっています。

 

アパートローンの変動金利も同様で、数年前まで4%前後が相場でしたが、最近は1%台で貸してくれる金融機関がいくらでもあります。こんなに金利が低いときに、わざわざ固定金利で借りる必要があるでしょうか。

 

ローンの返済期間の前半は、多くが利息の返済に充てられます。つまり金利が高いほど毎月返済する額の中での利息の割合も高いのです。ならばできるだけ低金利で借りて、返済額の中の元金割合を増やし、早期に元金が減るようにすべきです。そしてもし金利が上昇傾向に入ったら、固定金利に変更すればいいのです。

 

たまに誤解している人がいますが、変動金利でローンを組んだらずっと変動金利のままにしなければいけないわけではありません。いつでも固定金利に変更が可能です。

融資の可否は金融機関との「相性」もある

次にどの金融機関にローンの申込をするかですが、正直に言ってこれはオーナーと銀行の相性によります。

 

たとえば先日このような事例がありました。そのオーナーは、ある大学病院の医師で奥さんも同業、年収は二人合わせて3000万円でした。そこで融資の審査をネット系銀行1行と地銀2行へ申し込んだところ、その結果はみごとに2つに割れました。

 

●ネット系銀行では、非常に属性が高いということで「100万円単位の手数料を無料にするから借りてください」という回答。

 

●地銀Aでは、ネット系銀行と同様の理由で、通常金利2.0%のところ1.2%に。さらにすでに住宅ローンを組んでいるのなら同金利で借り換えを可能にする、とのこと。

 

●メガバンクBでは、審査結果は融資不可。理由は大学病院の医師は、独立開業するから将来の予測がつきにくい、とのこと。

 

金融機関によって融資審査は全く異なるので、融資が通るかどうかというのは、金融機関との相性もあります。

 

一般的な傾向として言えるのは、地銀はその地域に住む人を優先して審査を通します。また、メガバンクは法人相手の融資には前向きですが、個人のアパート経営に対しては厳しい態度を示すことが多いようです。

 

「俺は何十年もメガバンクと付き合ってきた。住宅ローンだって借りている。アパート用の資金も借りられるはずだ」。大手企業に勤める人にありがちな言葉ですが、この言い分はなかなか通らないのが現実です。

 

とはいえ、自宅併用の賃貸住宅なら前向きに検討するメガバンクもあります。以上のような得意不得意は、たとえ同じ銀行でも年度によって、さらには支店によっても異なることがあります。「昨年度はアパートローンに力を入れ過ぎたから今年は減らそう」といった銀行全体の方向性の転換や支店長の考え方ひとつで変わってしまうのです。

 

このようなことから借り手と金融機関の相性を見抜くのは至難の業です。土地探しや建物の建築依頼先と同様に、やはり頼れるパートナーに任せるのがベストです。

 

ただし金融機関の選び方には、ひとつだけ覚えていてほしいことがあります。それは、審査申込は何度でもできるということです。一行に断られたからといって、それですべてが終わるわけではありません。

 

確かにローン審査の申込手続きは、大量の書類を作成しなければならない重労働です。そこまでして審査が通らないと分かったときはショックでしょう。しかし、申込み先はほかにもあるのです。あきらめずに何度でもチャレンジする気持ちが必要です。

 

では最後に、あきらめない気持ちを応援する裏技的融資についてお伝えしましょう。その融資を行っているのは政府系の金融機関です。

 

従来は収益度外視のお役所的な仕事ぶりでしたが、株式会社化によって一転し、黒字必達の営業姿勢となりました。当初は、飲食店や商店などが主な融資先でしたが、近年は徐々に安定したアパート事業へと、その融資先が変化してきたのです。

 

2012年の年末に安倍政権が成立し、アベノミクスの「成長戦略」に「女性が輝く日本」というテーマが盛り込まれました。子どもを持つ女性が保育所不足を心配することなく、安心して仕事にも子育てにも取り組めるように国が支援するようになったのです。

 

こうした背景を受けてかどうかはわかりませんが、この政府系金融機関からは、実際に女性や20代の若年層のアパート経営に対する融資がされています。その内容は、

 

●頭金ゼロ

保証人なし

アパートを担保+個人信用(担保価値にプラス上限2000万円)

20年間、固定金利2%前後(2014年9月現在)

登録免許税不要

 

というもので、融資物件を担保にすることで、実際は追加で2000万円の合計4000万円まで借りることが可能です。

 

この特別な融資は、パンフレットにもホームページにも紹介されていません。アパート経営を専門に扱っている業者だからこそ知り得た情報です。

 

こんな大盤振る舞いの融資は、後にも先にもないかもしれません。本連載を読んでいるのは多くが男性でしょう。しかし、妻が融資を受けても何も問題がないはずです。政権が交代する前に利用するべきでしょう。

本連載は、2014年11月27日刊行の書籍『サラリーマンが30代から「アパート経営」で年収を300万円以上増やす方法』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

サラリーマンが30代から「アパート経営」で年収を300万円以上増やす方法

サラリーマンが30代から「アパート経営」で年収を300万円以上増やす方法

田脇 宗城

幻冬舎メディアコンサルティング

広がる格差、上がらない給与、将来に備えた生命保険や家のローンに子どもの教育費・・・。働けど働けど出費は増える一方なうえに、将来に対するお金の不安も拭えないという30代のサラリーマンは多いでしょう。 年収がプラス30…

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