止まらない物価上昇&減り続ける年金「この先、どうやって暮らしていけば…」【CFPが解説】

止まらない物価上昇&減り続ける年金「この先、どうやって暮らしていけば…」【CFPが解説】

長年にわたるデフレに慣れ切った私たちの生活は、ここ1年弱で状況が一変。急速なインフレに翻弄されています。とくに年金を生活原資とする高齢者たちは大変です。年金への物価の反映にはタイムラグがあり、現状ではむしろ減額されているなど、高齢者はWパンチです。いったいどうしたらいいのでしょうか。

物価は上昇しているのに、なぜ年金が減るのか!?

では、物価が上昇しているのに、なぜ年金額が0.4%減ることになったのでしょうか。

 

それは物価の上昇率が年金額に反映するのには時差があるからです。2022年度(4月~3月)の年金額の計算には、2021年1月~12月の物価が反映されます。そのときの物価変動がどうだったかというと、8月まではマイナスでした。

 

1月:-0.7%、2月:-0.5%、3月:-0.4%、4月:-1.1%

5月:-0.8%、6月:-0.5%、7月:-0.3%、8月:-0.4%

9月:0.2%、10月:0.1%、11月:0.6%、12月:0.8%

 

[図表2]2021年消費者物価指数

 

その結果、2021年1月~12月までの平均の物価上昇率は「-0.2%」となっています。ということで、2021年度のマイナスが、2022年度の年金額に反映され、今回年金額が0.4%減らされた、ということになりました。

 

要するに、物価の変動率が年金額に反映されるまでに、約1年のタイムラグがあるのです。

 

さらに年金は、4月分・5月分が6月に振り込まれる後払いのため、物価の上昇がボディブローのように効いてきている6月に振込額を見て、「どうしてモノの値段が上がっているのに、年金額が減ってるの!?」と、驚愕した方が多いわけです。

 

ところで「物価の上昇率は-0.2%なのに、なんで年金額が-0.4%なのか?」と思われたのではないでしょうか。年金額は、前述のとおり、物価上昇率もしくは賃金上昇率のどちらか小さいほうに連動する仕組みになっています。2021年の賃金上昇率が-0.4%だったので、年金額はこちらに合わせて0.4%減らされたということです※3

 

※3 年金額の計算に反映される賃金上昇率は、専用の数値を使用する為、前述の賃金上昇率とは異なります。

 

それでは、この先物価が上がり続けたとして、来年の年金額は物価に連動して上がるのでしょうか?

 

答えは「NO」です。

 

前述した通り、年金額は前年の物価上昇率もしくは賃金上昇率が反映されることになっていますが、「物価・賃金上昇率=年金額の上昇率」とはならない制度が導入されています。それを「マクロ経済スライド」といいます。

 

マクロ経済スライドとは、そのときの社会情勢(現役人口の減少や平均余命の伸び)に合わせて、年金の給付水準を自動的に調整する仕組みです。年金額の改定率がプラスのときだけ、スライド調整率というものが差し引かれます。要するに、物価や賃金の上昇率よりも、年金の上昇率は必ず低くなるということです。

 

2004年、当時の小泉純一郎政権が年金制度改革をおこなった際に、坂口厚生労働相が「100年安心の年金制度」と発言したことを覚えている方は多いのではないでしょうか。この発言の意図は、「100年先も老後は年金だけで生活できます!」ではなく、「公的年金制度は100年後も維持されます」ということです。その為には、現役世代には保険料をより多く負担させ、リタイア世代には給付額を下げる、こんなことがこれからも続いていくのではないでしょうか。

 

リタイア世代の方は今更そんなことを言われても…と感じると思いますが、現役世代はこれからますます自助努力の必要性が増してきますね。

 

 

高木 智子
ヨージック・ラボラトリー CFP

 

 

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