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特別寄与は生前の介護や看護など故人に対する貢献に報いるための制度ですが、相続人でない親族が遺産を分けてもらうためには相続人に特別寄与料を請求する必要があります。どのような場合に特別寄与料として遺産を分けてもらえるか、手続きはどのように行うかについて解説していきます。

特別寄与料はいくらもらえるか

特別寄与料の金額については、特別寄与料を請求する人(特別寄与者)が相続人と交渉して決めますが、明確な基準があるわけではありません。

 

話し合いがまとまらず家庭裁判所に処分を申し立てた場合も、「家庭裁判所は、寄与の時期、方法及び程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮して、特別寄与料の額を定める」と規定されているだけです。(民法第1050条第3項)

 

しかし、目安となる基準がなければ当事者どうしで金額を決めることは困難です。特別寄与者と相続人の主張に隔たりがあれば、いつまでたっても特別寄与料の金額は決まりません。

 

特別寄与料の金額を決める一つの目安として、寄与分の金額の算定方法を参考にすることができます。家庭裁判所では、相続人が故人の療養看護をした場合の寄与分を以下の算式で求めることがあります。

 

第三者が療養看護を行った場合の日当額×療養看護の日数×裁量割合

 

裁量割合とは、専門職ではない親族が療養看護を行ったことを考慮したもので、0.5~0.8の割合をかけます。

 

なお、上記のようにして求めた特別寄与料がいくら高額になったとしても、遺産総額から遺贈の価額(遺言によって分け与えられた遺産の価額)を除いた金額を超えることはできません。(民法第1050条第4項)

 

相続人が複数いる場合は、ある特定の相続人に特別寄与料の全額を請求することはできません。各相続人の負担は、特別寄与料の全額を法定相続分で分けた金額となります。(民法第1050条第5項)

特別寄与料の請求手続き

特別寄与料を請求する手続きには、次の二つの方法があります。

 

●遺産を相続する相続人と直接交渉する

●家庭裁判所に「特別の寄与に関する処分調停」を申し立てる

 

基本的には当事者どうしの交渉で解決を図りますが、当事者どうしで話がまとまらない場合は家庭裁判所に調停を申し立てることができます(民法第1050条第2項)。

 

調停では、調停委員が当事者の間に入って話し合いによる解決を目指します。調停が不調に終わった場合は、家庭裁判所による審判手続きに移行します。

 

家庭裁判所への申し立て期限は、特別寄与者が相続の開始及び相続人を知ったときから6ヵ月を経過するとき、または相続の開始から1年を経過するときまでです。当事者どうしで話し合う場合には期限はありませんが、調停を申し立てる可能性を考慮して早めに対応することをおすすめします。

 

特別寄与料は相続税の課税対象になる

特別寄与料は相続税の課税対象になります。特別寄与料をもらった人だけでなく、請求に応じて支払った相続人も手続きが必要になる場合があります。

 

特別寄与料をもらった人

受け取った特別寄与料は、被相続人から遺贈を受けた(遺言によって分け与えられた)とみなして相続税の課税対象になります(相続税法第4条第2項)。

 

被相続人の遺産の総額が基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超えている場合は、相続税を申告しなければなりません。申告の期限は、特別寄与料の金額が定まったことを知った日の翌日から10ヵ月以内です(相続税法第29条)。

 

なお、相続税では被相続人の1親等の血族・配偶者以外の人について税額が2割加算されます(相続税法第18条)。特別寄与者は多くの場合相続税の2割加算の対象になり、相続税に以下の金額が加算されます。

 

相続税の2割加算が行われる場合の加算金額 = 各人の税額控除前の相続税額×0.2

 

特別寄与料を支払った相続人

特別寄与者からの請求に応じて特別寄与料を支払った相続人は、相続税の申告において課税対象の遺産から特別寄与料を差し引くことができます(相続税法第13条第4項)。

 

相続税の申告をした後に特別寄与料を支払った場合は、特別寄与料の金額が定まったことを知った日の翌日から4ヵ月以内に更正の請求をすることで還付を受けることができます(相続税法第32条第1項)。

 

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本連載は、税理士法人チェスターが運営する「税理士が教える相続税の知識」内の記事を転載・再編集したものです。

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