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遺産相続の手続きでは、手続きの方法だけでなく遺産をいつもらえるかを知っておくことも重要です。故人の預金がすぐにもらえると思って銀行に行っても、預金の引き出しには数週間以上かかるもの。遺産をいつもらえるかを事前に知っておけば、必要な手続きに早く取りかかることができるでしょう。相続した遺産がいつもらえるか、だいたいの目安をみていきます。

遺産をもらう前にお金が必要になったときの対処法

遺産相続では、手続きをしてから実際に遺産をもらえるまで数週間程度の時間が必要です。その間に葬儀費用や当面の生活費などお金が必要になった場合でも、故人の預金を勝手に引き出してはいけません。

 

遺産をもらう前にどうしてもお金が必要になった場合は、次のような対処法があります。

 

●死亡保険金を請求する

●預金の仮払い制度を利用する

 

では、故人の預金を勝手に引き出してはいけない理由と、先にお金が必要になったときの対処法について詳しく解説していきましょう。

 

故人の預金を勝手に引き出すのはトラブルのもと

故人の預金は、死亡を届け出た時点で口座が凍結されて入出金ができなくなります。

 

しかし、実際には故人の預金を引き出せることもあります。たとえば、相続人がキャッシュカードの暗証番号を知っていて、ATMから引き出す場合などです。

 

このように正式な手続きをしないで故人の預金を勝手に引き出すと、次のようなトラブルに見舞われます。

 

●遺産の横領が疑われて他の相続人ともめる

●単純承認したことになり相続放棄ができなくなる

 

葬儀費用を支払うために必要であったとしても、故人の預金を勝手に引き出すと、他の相続人から「遺産を横取りした」と疑われる場合があります。どうしてもお金が必要な場合は、葬祭業者から領収書をもらうなど、引き出した預金の使途を証明できるようにしておくとよいでしょう。

 

また、預金を勝手に引き出すと単純承認をしたことになります。単純承認は被相続人(故人)の遺産・債務をすべて相続するものであり、あとから相続放棄することはできません。故人に多額の借金がある場合は、借金の返済義務を負わなければなりません。

 

死亡保険金はすぐにもらえる

遺産をもらう前にどうしてもお金が必要になった場合の対処法の一つは、死亡保険金の請求です。故人が死亡してすぐに請求することが多いですが、まだの場合は速やかに手続きをしましょう。

 

契約上の保険金受取人が保険会社に請求すると、早ければ数日で死亡保険金がもらえます。

 

故人が旅行先の不慮の事故で死亡したときは、クレジットカードに付帯されている国内・海外旅行傷害保険から死亡保険金が下りる場合があります。ただし、旅行費用がカードで支払われていることが条件となっている場合があるので確認が必要です。

 

なお、死亡保険金は受取人固有の財産であり、故人の遺産ではありません。したがって、相続人どうしで分け合う対象にはなりません。

 

遺産分割前でも預金は一定額まで引き出し可能

遺産分割協議がまとまるまでの間にどうしてもお金が必要になった場合は、遺産分割前の預金の仮払い制度を利用することもできます。

 

故人の預金は、正式な相続手続きが済むまで引き出すことができませんでした。しかし、それでは遺族が生活に困ることもあるため、2019年に施行された改正民法で「遺産分割前の相続預金の払戻し制度」(仮払い制度)が創設されました。

 

仮払い制度では、遺産分割が確定する前であっても、一定の範囲で故人の預金を引き出すことができます。ただし、相続手続きと同様に戸籍謄本などの提出が必要で、預金もすぐにはもらえません。

 

■遺産分割前の相続預金の払戻し制度

遺産分割前の相続預金の払戻し制度では、金融機関に直接申し出るか、家庭裁判所に審判を求めるかのいずれかの方法で故人の預金を引き出すことができます。

 

・金融機関の窓口に直接申し出る

金融機関の窓口に直接申し出る場合は、次に示す金額まで他の相続人の同意なく預金を引き出すことができます。

 

被相続人の死亡時の預金残高(口座・明細ごと)×1/3×預金を引き出す人の法定相続分

(ただし同一の金融機関ごとの上限は150万円)

 

・家庭裁判所に審判を申し立てる

遺産分割協議がまとまらず、家庭裁判所に遺産分割の調停または審判を申し立てている場合は、家庭裁判所に預金の引き出しの審判を申し立てます。申し立てが認められると、審判書謄本を金融機関に提出して預金を引き出します。

 

これらの方法で引き出した預金は、遺産の一部を先に受け取ったものとして相続分から差し引かれます。

 

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本連載は、税理士法人チェスターが運営する「税理士が教える相続税の知識」内の記事を転載・再編集したものです。

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