(画像はイメージです/PIXTA)

離婚後の生活を見据えて、財産分与の分割方法については損のないようきちんと決めておきたいところです。そこで実際にココナラ法律相談のオンライン無料法律相談サービス「法律Q&A」によせられた質問をもとに、一般的な財産分与の割合の決め方について石橋千明弁護士に解説していただきました。

財産分与の割合は所得や才覚によって変わる?

財産分与は原則として2分の1ずつ分割されますが、相談者の方は医師や弁護士など特殊な才覚等がある場合、別途割合を決めることがあると聞いたようです。そこで相談者の方は、ココナラ法律相談「法律Q&A」に次の2点を相談しました。

 

①高額所得者のサラリーマンの場合、2分の1に限定することなく、別途割合を決めることもあるのか。

 

②もしあるとすれば、どのような基準になるのか。(年収1,000万円以上、あるいは役員・部長以上の役職など)

財産分与の2分の1ルールが修正される場合とは?

財産分与は、婚姻中に夫婦が協力して形成した財産を分け合うことをいいます。財産分与には、①清算的財産分与、②扶養的財産分与、③慰謝料的財産分与に分類されますが、特に問題になるのは①清算的財産分与です。

 

清算的財産分与は、「夫婦が婚姻中に有していた実質上共同の財産を清算分配するもの」とされています(最高裁昭和46年7月23日判決)。婚姻中に夫婦で協力して形成した財産が財産分与の対象であり、夫婦が協力して形成したものであるから、夫婦の収入の多寡にかかわらず、平等に分けるべきであるとされています。これを「2分の1ルール」といいます。

 

2分の1ルールは、法律で定められているわけではないものの、実務に浸透して定着していますので、原則は、夫:妻=5:5の割合で分与することになります。もっとも、2分の1ルールは、あくまでも原則ですから、当事者間の話し合いによって、修正することは可能です。2分の1ルールを基準としつつも、個別の諸々の事情を考慮して、割合を修正することもあります。

 

これまで私が携わった案件においても、財産形成における貢献度が夫婦間で大きく差があることを夫婦が互いに明確に認識していた場合や、財産分与協議が長引いて泥沼化した方が不利益となる事情がある場合等においては、話し合いの末、あえて2分の1ルールを大幅に修正したケースもありました。極端ではありますが、そもそも財産分与自体を行わないケースもないわけではありません。

 

しかし、夫婦間の話し合いは穏当に進むことばかりではなく、夫婦が各々立場で各々の事情を抱えており、利害が対立することも少なくありません。話し合いでは修正することができない場合であっても、2分の1ルールを適用すべきでない特殊な事情があるケースもあります。先ほど説明したように、2分の1ルールは夫婦間の平等を背景とするため、平等に分けることが公平ではない事情が認められれば、修正されることがあります。

 

例えば経営者、医師等の専門職やスポーツ選手など、特殊な技術や資格、能力等を有しており、それによって巨額の夫婦共有財産が形成された場合です。これまでの裁判例においても大幅に分与割合が修正されたケースもありました。

 

具体的な割合は、財産の規模や金額、その原資となった財産の性質、資格・技術の種類や資格や技術を取得した時期、夫婦の貢献の程度等を考慮して、総合的に判断されます。なお、夫が医療法人を経営していた事案では、夫:妻=6:4と修正されています(大阪高裁平成26年3月13日判決参照)。ほかにも、夫婦の一方が浪費をした場合や、婚姻前から有していた財産が支出されて多額の共有財産が築かれた場合等にも、修正された裁判例があります。

繰り返しになりますが、財産分与は、夫婦の収入の多寡を問わずに財産を平等に分与する2分の1ルールが原則であるため、単に夫婦の一方が高収入であることや役職に就いている等のみでは、修正されません。2分の1ルールを適用すべきではない特殊な例外事情がある場合には、それを主張したい側が、適格に主張・立証する必要があります。
 

次ページ会社の財産・株式は対象になるのか

あなたにオススメのセミナー

    人気記事ランキング

    • デイリー
    • 週間
    • 月間

    メルマガ会員登録者の
    ご案内

    メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

    メルマガ登録
    会員向けセミナーの一覧
    TOPへ