(※写真はイメージです/PIXTA)

困難を何度も乗り越えてきた「創業100年以上の企業」の数は、なんと日本が世界一。未曽有の経済危機に見舞われても揺らがない「本当に強い会社」には、どんな秘密があるのでしょうか? 本稿では、田宮寛之氏の著書『何があっても潰れない会社』(SBクリエイティブ)より、「株式会社吉字屋本店」について見ていきましょう。

吉字屋の社是、「最古にして最新たれ」

吉字屋の社是は「最古にして最新たれ」。この姿勢は、もともと塩問屋であったものが時代の変化に俊敏に対応し、明治期の「最新」であった油へとシフトしたことからも明らかだが、現在の18代目・髙野孫左ヱ門社長は、直近の具体例として「太陽光発電」を挙げる。

 

たとえば、山梨県が東海沖地震の警戒区域の指定を受けていることに配慮して、新設の給油所では完全独立で電源が供給できるようにした。いわゆるコージェネレーション(熱源より電力と熱を生産し供給する)システムと太陽光発電システムの併設により、独立して電気供給ができる給油所を作ったのである。

 

きっかけは、1986年(昭和61)ごろ、昭和シェル石油が薄膜太陽電池の研究・製造をしていたことにある。その動向に注目していたところ、1989年に資源エネルギー庁省エネルギー石油代替エネルギー対策課を窓口として太陽光発電補助事業を行っていることを知り、手を挙げた。

 

制度として発足はしたものの、まだ多くの企業が二の足を踏んでいるなかで吉字屋は率先して一歩を踏み出した。歴史ある企業として従来の事業だけにこだわるのではなく、新しいことにもチャレンジする。それは、先に挙げた新設給油所のコージェネレーションシステムというかたちで結実した。まさに、「最古にして最新たれ」を地で行く例だったのだ。

 

また、太陽光発電といえば2009年(平成21)には「太陽光発電の余剰電力買取制度」が施行され、一時は利益を求めて多くの人が参入した。そのブームはたちまち去ったが、吉字屋は地道に太陽光発電の提案・販売事業を続けてきた。

 

その取り組みが、昨今、ふたたび注目を浴びている。太陽光発電の自家消費ニーズが高まっているからだ。つまり太陽光発電による電気を売って利益を得るのではなく、太陽光で自家発電することで、電気会社に支払う電気料金を下げるというニーズである。

 

また、2020年11月に行われたG20サミットでは、菅義偉(すがよしひで)首相(当時)が「温室効果ガスの排出量を2050年までに実質ゼロにする」と発言した。一時の流行で半ば終わった感も否めなかった再生可能エネルギーだが、この発言によって、CO2削減という観点からも改めて脚光を浴びつつある、と髙野社長は見る。

 

吉字屋は世の中の雰囲気に流されることなく、ただ素直に自分たちが必要だと思ったから太陽光発電事業をコツコツ続けてきた。その間、着々と知識と経験を蓄積したことで、現在、経済効率と環境配慮の両面で太陽光発電を取り入れたい、という企業からの引き合いが多くある。

 

最古にして最新であろうと努めたことが時間を置いて評価につながり、実績にも結びついているのだ。

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何があっても潰れない会社 100年続く企業の法則

何があっても潰れない会社 100年続く企業の法則

田宮 寛之

SBクリエイティブ

「何があっても潰れない会社」は、どこが違うのか? 世界恐慌、リーマン・ショックといった、歴史上稀にみる深刻な経済危機に見舞われてもびくともしなかった「強い老舗企業」18社の秘密を、経営者、社員への濃密な取材をも…

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