(※写真はイメージです/PIXTA)

精神分析学の創始者・フロイトによると、私たちが意識できる部分は氷山の一角に過ぎず、人間の考えや行動や心は、意識をはるかに凌ぐ巨大な「無意識」によって支配されているといいます。自分にはどんな無意識が働いているのか。完全に理解することはできませんが、精神分析によって探ることはできます。自覚できない無意識の領域を探るヒントとして、本稿では「夢」について見ていきましょう。精神科医・庄司剛医師が解説します。

なぜ「変な夢」を見るのか?

私たちが寝ている間に見る夢は、荒唐無稽なストーリーであったり、現在と過去の人物や要素がごちゃ混ぜに出てきたりしてなにを意味しているか分からない、不可解なものが多いものです。それは、さまざまな要素が脚色・修正されているからです。無意識の奥底にある不安や恐怖などが、そのまま夢に出てきたらどうなるでしょう。あまりにもリアルで刺激が強過ぎたら、恐ろしくなって飛び起きてしまいます。

 

夢には睡眠を守ろうとする機能があり、刺激しないようにいろいろな方法で偽装が施されます。例えば登場人物や物事が別のものに置き換えられたり、いろいろな意味が多層的に重ねられたりします。つまり前の日に起こったことが記憶の残渣として夢に現れているだけかと思ったら、小さいころの重要な記憶と結びついていたり、それが同時に治療者との関係で感じていることを表していたりすることもあるのです。

 

ほかにも高度に抽象化され、なにか別のものに象徴されるということもあります。例えばフロイトの時代では川の流れや水道が幼少時の排尿にともなう快感や攻撃の記憶と結びついているのではないか、といった解釈が盛んに行われました。こういったような抽象化、象徴化の機能は心の発達によって得られる洗練された機能ということができます。

 

無意識の領域にたまっているものは、多くの場合で「抑圧された」ものです。自分の知らない間に無意識のなかに押し込めた、自分では認めたくない、知りたくない、忘れたい願望です。それが、隙あらば意識のなかに浮上してこようとしてくるのを、覚醒時は意識と無意識の間にフタをしているわけですが、睡眠中はフタがゆるんでしまいます。そして、睡眠を妨げない程度に脚色し、意識のなかに夢となって入り込んでくるわけです。

 

日常での言い間違いの場合は、「お世話になっております」と言うところを「お世話をしております」と言ってしまったように、“お世話になっている”と言おうとする力と、“お世話をしている”と言おうとする力が戦った結果、後者が勝ったために生じました。

 

同じことが夢のなかでも起こっていて、意識のなかに浮上しようとする「抑圧されたものが出てこようとする」力と、それを「阻止しようとする」力が戦っています。その結果、いうなれば妥協した産物として脚色されたストーリーになって表われるのです。

次ページ起きたら「夢を忘れてしまう」のはなぜか?

※本連載は、庄司剛氏の著書『知らない自分に出会う精神分析の世界』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

知らない自分に出会う 精神分析の世界

知らない自分に出会う 精神分析の世界

庄司 剛

幻冬舎メディアコンサルティング

自分でもなぜか理解できない発言や行動の原因は、過去の記憶や体験によって抑え込まれた自分の本来の感情が潜む「無意識的な領域」にあった! 憂うつ、怒り、不安、落ち込み…。理由の分からない心の動きを精神科医が考察。…

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