アウトソーシングを進める企業が急増していく
■ビジネスパーソンは、在宅勤務になって喜んでいる場合ではない
さらに、新型コロナの蔓延防止からテレワークが推進されたことも、アウトソーシング化を加速させている。「ズーム」などのオンライン会議システムの活用が進んでいるが、社員にフルタイムで在宅勤務をさせるくらいなら、もっと能力のあるエキスパートに時間単位で業務を委託したほうがずっと仕事のパフォーマンスは高くなる。テレワークに加えて、AI(人工知能)やRPA(ソフトウェア型ロボットによる業務の自動化)が普及し始めているので、今後は正社員の採用を減らしてアウトソーシングを進める企業が増加していくに違いない。
この話は新卒採用だけに留まらない。コロナ対策として在宅勤務を始めて、満員電車で通勤しなくてよくなったと喜んでいる人は、これから仕事を失うかもしれない。会社に出社しなくてもできる仕事というのは、大抵は能力とスキルのある人なら誰でもできる仕事だということだからだ。テレワークが普及すればするほど、「誰にも負けないスキルがないか」「実績を残しているのか」といった点がますます求められるのだ。
新卒採用の場面でも、「自分はこれができます」という売り込みがさらに必要になってくる。しかし、日本の大学はすぐに使える実用的な知識とスキルを教えていないので、大卒人材は「使えない人材」だと評価され、採用を見送られ始めるだろう。もっと言えば、大卒よりも、高専や専門学校で使えるスキルを身につけた人のほうが、企業から声がかかりやすくなっていくだろう。
■コンサルタントが人気職種ではなかった時代
最新の新卒採用に関するデータを見ると、東大・京大の就活人気ランキング上位には、マッキンゼーやボストン・コンサルティング・グループなどのコンサルティングファームが並んでいる。
私が在籍していた当初、マッキンゼーは日本では無名の会社だった。英語で社名を書くと「McKinsey & Company, Inc.」となるため、「インクだから印刷会社ですか?」と言われたことも、冗談ではなく実際にあった。
そんな中、マッキンゼーはもともと中途採用しか募集していなかったが、新卒採用を始めることにした。マッキンゼーを背負っていた私としては、東大や京大といった一流大学の人材が欲しい。だから、春休みに大学に行って「1日1万円」とアルバイト募集をかけた。
そうすると、春休みの2週間に目いっぱい稼ごうという学生がわんさか集まってきた。学生たちにはコンサルタント流の問題解決の手法を教えて、プロジェクトをやらせてみる。レポートを書かせて、2週間後に私たちの前で発表させる。
優秀な学生はすぐに優秀だとわかるので、即採用と決めて囲い込んだわけだ。そうしているうちに、私がマッキンゼーを辞める頃には、東大法学部の就職人気ランキングの8位にまで上がった。
私の在任期間中、540人くらい採用をしたが、採用したコンサルタントは次々に多くの分野で活躍していった。De NA創業者の南場智子氏、今や時価総額上位にランクインするエムスリーの谷村格氏など、多くの起業家が育っていった。巻頭言で紹介した日本交通の川鍋一朗氏もウエルスナビの柴山和久氏もマッキンゼー出身だ。デジタル庁の初代デジタル監の石倉洋子氏も、人事院総裁の川本裕子氏もマッキンゼーの出だ。