イギリス式全寮制名門校のメソッドが日本に上陸
2021年から22年にかけて、インターナショナルスクールや海外名門学校への進学を考えている保護者の間で、熱視線を集めるニュースが相次ぎました。
岩手県安比高原にはイギリス最高峰のパブリックスクール(全寮制の私立学校)の系列校、ハロウインターナショナルスクール安比ジャパン、千葉県柏市にはラグビースクールジャパンが開校。追って同じくイギリスの名門の系列校、マルバーン・カレッジ東京が東京小平市にオープンするというニュースも入ってきました。また、ノース・ロンドン・カレッジも日本校パートナーを募集し、海外名門校オープンラッシュはまだ続く見込みです。
では、実際にこれらの超名門校に合格するのはどのようなご家庭なのでしょうか? そしてインターナショナルスクールに合格するために各家庭どのような受験対策をしてきたのか探ってみます。
開校ラッシュの先陣を切り、2022年8月に1期生を迎えるイギリスの名門ボーディングスクール系列校、ハロウ安比校の合格者に、全寮制名門校を選ぶ理由と、知られざる考査のリアルを伺いました。
英語は「アルファベットも書けないほど」だったが…
【CASE① Aさん】
お子様:公立小学校に通学中、高学年男子
ご自身の職業:医師
お住まいの地域:日本の地方都市
――「日本の画一的な教育が、これから必要とされるグローバル人材育成に合致しているのか悩み、一度視野を広く持って子どもの進路を考えてみようと思いました。他県のインターナショナルスクールを検討しているなかで、通っていた学習塾で目にしたハロウ安比校の情報に目を留めたことがきっかけです。結果的には、受験対策としては最後までこちらの地元の学習塾にお世話になり、月額3万8000円、1年間ほどの通塾で合格を手にすることができました。
正直にお話ししますと、息子は受験する1年前から英語の勉強を始め、それまではアルファベットも書けないほど。やる気があれば、そのレベルから名門ボーディングスクールに挑戦できるというサンプルになれば嬉しいですね。事前に、何のためにそこで学ぶのか、ということをじっくり話し合って、親子で同じ方向を向けたことが大きかったように思います。
まずは英検Jr.のための勉強からスタートし、半年後には3級まで取得しました。並行してオンライン英会話や、文法、ディクテーションを地道に行いました。インターネットで検索した結果、ボーディングスクールの入学考査は欧米の試験形態に近いことが予想されたので、小学校の基礎科目、特に算数を塾で強化しつつ、自己アピールを口頭・記述でできるように英語で練習をしました」
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日本人でボーディングスクールに合格するのは、幼少期から「英語漬け」の環境にある一部の人、というイメージを覆すエピソードです。実は近年、Aさんのように、日本生まれ、日本育ちのご両親が子どもに国際的な環境を求める例は、さほど珍しくありません。
ご両親は従来の日本教育では得られない体験や学びを求めて学校を選びます。日本の教育のなかで国際的な環境に身を置く難しさを実感しているからこそ、学習だけではなくクラブや生活のすべてを英語で、世界中から集まる仲間と共にできる環境に魅力を感じるのでしょう。たとえばハロウ安比校では、国際色豊かな生徒が自然の宝庫、岩手県安比高原で学びます。教師陣の大半はイギリスから招かれ、広大なキャンパスで、プロ級のコーチとともに夏はテニスやラグビー、冬はスキーなど本格的なスポーツに勤しむと言います。
また、Aさんの証言から分かるように、ボーディングスクール側は入学時点での語学力だけで審査することはなく、包括的に評価をしてくれるのが特徴です。家庭内がバイリンガル環境でなくとも、事前に準備をすることで合格した方はたくさんいます。準備期間はさまざまですが、近年小学校受験や中学校受験の準備期間が低年齢化し、長期戦の様相を呈していることを考えれば、子どもと家庭の負担はともに、大きくはないとも言えます。