中国株は5月以降上昇
■中国株は今年に入り、米連邦準備制度理事会(FRB)の金融引き締め加速観測に加え、中国政府のゼロコロナ政策による上海市などのロックダウンや、米中対立による中国企業の米国預託証券(ADR)の下落を受けて、4月下旬にかけて下落基調を辿りました。しかし、5月以降は、景気下支え策が矢継ぎ早に発表されたことや、上海のロックダウンが解除される方針が示されたことで、投資家心理が改善し、戻り歩調となっています。
■6月に入り、米国株が大きく調整するなかでも、中国本土の代表的な株式指数の上海総合指数、深センCSI300指数は堅調な展開となっています。4月下旬の安値からそれぞれ15%、13%上昇しています(6月15日時点)。
5月の生産は予想外のプラス
■中国国家統計局が15日に発表した5月の主要経済指標はいずれも市場予想を上回りました。上海市などのロックダウンの影響で小売売上高が引き続き停滞したものの、鉱工業生産はいち早く回復傾向を示しました。
■鉱工業生産は前年同月比+0.7%と、市場予想の▲0.9%を上回り、前月の▲2.9%からプラスに転じました。上海市ではロックダウンが続いたものの、一部のコロナ規制が5月に緩和され、工場が徐々に操業を再開したことや物流面の混乱が和らいだことで予想外のプラスとなりました。新エネルギー車の生産が+108.3%と倍増し、自動車生産は全体で▲4.8%と、4月の▲43.5%から大きく持ち直しました。
■一方、小売売上高は前年同月比▲6.7%と、前月の▲11.1%からマイナス幅が縮小したものの、3ヵ月連続の前年割れとなりました。外出制限が続いた影響で飲食業が▲21.1%と、前月の▲22.7%に引き続き低迷しました。自動車販売は▲16.0%と、前月の▲31.6%からマイナス幅が縮小しました。
■1~5月の固定資産投資は前年同期比+6.2%と、1~4月の+6.8%から伸び率が鈍化しました。このうち政府の景気対策の影響を受けるインフラ投資は+6.7%と、前月から小幅に伸びました。一方、住宅市場の停滞から不動産開発投資は▲4.0%と、前月に続きマイナスとなりました。
中国株は景気持ち直しから底堅く推移
■中国株は15日、主要経済指標が市場予想を上回る結果となり、中国景気に対する過度な警戒感が和らいだことから上昇しました。上海総合指数や深センCSI300指数は、約3ヵ月ぶりの高値を付けました。
■これまで資源価格の上昇やゼロコロナ政策による景気減速観測から企業業績の下振れ懸念が根強かったものの、予想PER(株価収益率)が割安水準に改善していることから、株価はすでに業績低迷を織り込んだ可能性があります。
■ウクライナ情勢の膠着化やFRBの引き締め加速など、当面不透明な投資環境は続くとみられますが、今後は政府による景気支援策やロックダウンの解除を受けて、景気の持ち直しとともに企業業績の底打ちが視野に入ってくるとみられます。
■世界的には株式市場にとって厳しい環境が続く可能性がありますが、中国株は底堅く推移するとみています。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『米株が調整するなか、中国株が上昇…今後の展開は?【専門家が解説】』を参照)。