遺族基礎年金は、ある程度割り引いてプランニングする
ライフプランの対局にあるのが、デスプランです。デスプランとは、直訳すれば「死後の計画」のこと。ライフプランが生きている間の収入で計画するのに対して、デスプランは皆さんが死んだ後に入ってくる収入を計算します。
前回のライフプランの話で挙げたAさんの場合、Aさんが亡くなってしまうと働いて得る1億2500万円の収入は一切得られなくなってしまいます。
では、Aさんが亡くなった後に入ってくるお金とはどのようなものなのか、次に挙げてみます。Aさんの死後、遺族の収入は基本的にこの5つから得ると考えます。
<基本的な遺族の収入>
①遺族基礎年金
国民年金に加入中の方が亡くなった場合、その方によって生計を維持されていた「十八歳到達年度の末日までの間にある子(障害者は二十歳未満)のいる配偶者」又は「子」に支給。(日本年金機構より要約)
②遺族厚生年金
厚生年金に加入中の方が亡くなった場合、その方によって生計を維持されていた遺族(一配偶者または子、二父母、三孫、四祖父母の中で優先順位の高い方)に支給。(日本年金機構より要約)
③団体信用生命保険
住宅ローンなど債務保証を伴って融資を受けた債務者(住宅ローン利用者)が、返済中に死亡もしくは所定の高度障害といった不測の事態に陥った場合に生命保険会社から受取る保険金。この保険金の受け取り人は債権者(主に銀行等)なので、結果的に住宅ローンが返済される。
④遺族の労働収入
遺族である奥様が働いて得る収入。
⑤死亡保険の保険金
加入中の生命保険から給付される。
①の遺族基礎年金は、年金の制度から出るもので、子どもが該当年齢であれば収入として考えてよいでしょう。また会社員で厚生年金に加入していれば②の遺族厚生年金を受け取ることができます。
ただし、①については今後の年金政策によっては、どうなるかわかりません。今のところは支給されていますが、年金制度が不安定な状態であることを考えると、将来的に削減もしくは廃止される可能性も否定できません。
筆者個人としては、遺族基礎年金は変更を前提にしたほうがよいと考えています。したがって、これからデスプランを考えようという方たちは、遺族基礎年金はある程度割り引いてプランニングすることをお勧めします。
③の団体信用生命保険は、よく団信と略され、住宅ローンを借りたときには多くの場合加入が求められます。
ローンの返済中に借主が死亡などで返済ができなくなった場合、団信の保険金をもってローンを完済するため、遺族はそのまま持ち家に住み続けることができます。
配偶者の労働形態についても考慮しておく
④の労働収入は、遺族である配偶者(奥様)の働き方によって変わります。
よく、「不足分は妻が働けばいい」と簡単に言う方がいらっしゃいますが、それはあまり現実を見ていない考えです。
例えばAさんの場合、現在奥様は専業主婦です。もし、明日Aさんが亡くなったとしたら、奥様が働いてどれぐらいの収入を得られるでしょうか。
近頃、新聞などでマタニティハラスメントなどという言葉が取り沙汰されているように、産休や育児休暇の制度が充実してきたとはいうものの、正社員ですら取得が難しいと言われているのが現実です。
Aさんのご両親に子どもを預けて働きに出るといっても、パートタイマーの仕事ですら見つけるのは一苦労かもしれません。
特別な専門知識や技能を持っていて、すぐにでも仕事に復帰できるのなら別ですが、専業主婦だった女性がフルタイムで正社員の道をすぐに見つけるのは、かなり難しいのが現実でしょう。
もしかしたら10年後、20年後、子どもが大きくなって手を離れた頃にAさんが亡くなるかもしれません。それならば、フルタイムの仕事も探しやすいと思うかもしれませんが、今度は年齢的な面で奥様が仕事を見つけるのは難しくなる可能性があります。
遺族の労働収入分を考えるときには、奥様の働き方、労働形態についても考えておくべきでしょう。想定した収入を得ることが現実に可能かどうか、具体的に考えておくことが必要です。
最後に残るのが死亡保険の保険金です。①から④までを合計した金額と、ライフプランで計算した、生きている間に得る収入の金額の差を、この保険金が補填することになります。