前回は、受け取った保険金を無駄にしないためのポイントを説明しました。今回は、単身者や専業主婦だからこそ、早めに保険加入するべき理由を見ていきます。

自分の両親を不幸にしないためにも、保険に加入を

ここまでの連載で、結婚している人の話を中心にしてきたので、「自分は独身で養わなければならない家族がいないから保険は必要ないのか」と思った若い人もいるでしょう。もしくは「主人が保険に加入していれば安心」と思う女性がいるかもしれません。

 

しかし、残念ながらそれも間違った考えです。筆者は、すべての人が保険に加入するべきだと考えています。

 

男性も女性も、既婚者も未婚者も、老いも若きも関係ありません。既婚者で養うべき家族がいる、一家の大黒柱には絶対に保険が欠かせません。でも、単身者でもそれは同じことなのです。

 

若い人は「結婚したら保険を考える」と言いますが、家族はパートナーだけではありません。皆さんは一人で生きてきたわけではないでしょう。生まれた日からおむつ代がかかり、教育費がかかり、大人になる今日まで、ご両親が手塩にかけて育ててくれたはずです。

 

人がオギャーと産声を上げてから大人になるまでに、1人当たり3000万円ぐらいのお金がかかっているとも言われています。

 

もし、皆さんが両親より先に死んでしまったらどうなるでしょう。生きていれば親孝行もできますが、死んでしまったら親に何もしてあげられなくなります。将来、親に介護が必要になることもあるでしょう。しかし、皆さんはすでに亡くなっていますから力になることができません。

 

たとえ兄弟がいたとしても、皆さんがいない分、どうしても1人当たりの負担は増えてしまいます。2人兄弟なら半分ずつ負担すればよかったものが、一人ですべてやらなければならなくなり、金銭的にも精神的にも大きな迷惑をかけることになります。

 

そもそも、親より先に死ぬのが一番の親不孝なのですが、さらに保険に加入していなければ金銭的なフォローもできないことになり、さらに輪をかけた親不孝者になってしまいます。

 

親孝行は、本当は自分が生きていなければできないことですが、もしそれが不可能になったとしても大人になるまで育ててくれた恩返しを保険という形で残す術があります。せめて3000万円ぐらいの保険に加入しておいて、両親に育ててくれたお礼をするのは悪いことではありませんよね。

加入を先延ばしにすると、健康面でのリスクも上がる

それに、保険加入を先延ばしにしても良いことなど一つもありません。なぜなら、結婚してから保険に加入しようと思っていたとしても、その段階で加入を断られる可能性もあるからです。

 

そもそも、生命保険は「死亡、病気やケガなどによって一定の収入を得られなくなった場合に、その経済的損失を補うための生活保障制度」です。

 

原資は多くの人が保険料という形で公平にお金を出し合い、その大きな共有の準備財産の中から、いざというときに保険金が支払われる「相互扶助」と呼ばれる仕組みです。相互扶助の前提として、加入者の条件は等しくなければなりません。条件とは、健康状態や年齢を意味します。

 

生命保険は、基本的に健康でなければ加入できません。健康な人同士が集まって保険料を出し合い、亡くなってしまった人に対して保険金が支払われます。

 

ところがそこに持病がある人が加入したらどうなるでしょう。健康な人よりも持病がある人のほうが死亡するリスクは高くなります。そうなると、相互扶助の均衡が崩れ、健康な加入者が不利になってしまいます。したがって、一般的な生命保険には持病がある人は加入できません。

 

結婚が決まり保険に加入しようと思ったとき、健康に問題があると診断されたら保険には加入できなくなってしまいます。結婚年齢が高くなってきている現在、ともすれば結婚を決めた頃には持病の一つや二つあってもおかしくない、などということになりかねません。

 

独身であっても、若くて健康に問題がないうちに保険に加入して受取人を親にしておき、結婚したら受取人をパートナーにすればよいだけの話なのです。

本連載は、2015年6月26日刊行の書籍『死亡保険金は「命の値段」』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

死亡保険金は「命の値段」

死亡保険金は「命の値段」

杉山 将樹

幻冬舎メディアコンサルティング

命とお金に関わる保険は、生きている限りほとんどの人にとって必要不可欠な金融商品ですが、近年、その種類や保障内容が多様化・複雑化しています。 加入者は要望に合わせて自由に保険を選べるようになったものの、その選び方…

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