前回は、保険を選ぶ際に重要な「夫婦間の意思の共有」について説明しました。今回は、保険金を有効に使う方法を見ていきます。

大金を目の前にすると「冷静な判断」ができなくなる!?

夫婦が将来の希望についてお互いの意思を確認し、共有するのには、もう一つ大切な役割があります。

 

それは保険金を「生きたお金」にするためです。保険金は、亡くなった人の家族の将来を守るために使われてこそ生きるお金となります。ところが、なかなかそううまくいかないのが現実です。

 

想像してください。年収の何倍ものお金が、あるとき一気に手元にやってくるのです。金銭感覚が麻痺してしまうのも、決して不思議ではありません。

 

例えば、もし皆さんの手元に保険金として5000万円が振り込まれたらどうするでしょうか。多くの人が、あまりの大金にどうしてよいかわからなくなり、とりあえず銀行などに預けています。一度預金して頭を冷やし、冷静に使い道を考えることができるのなら問題はありません。

 

ところが、手元に大金があることで気持ちまで大きくなり、金銭感覚がおかしくなって大きな買い物をしてしまう人も多いのです。

 

ブランド品のバッグぐらいならかわいいもので、いきなり車を買い替えてみたり、マンションを購入してみたり。予定になかった大きな買い物をしてしまう人がいます。特に不動産などの大きな買い物をすると、5000万円などあっという間に消えてしまいます。

 

困るのは、その後です。あっという間に保険金を使い切ってしまってから、そのお金の意味に気が付いても後の祭りです。

 

そもそも、保険金とは残された家族が経済的に困らないように、そして夢や願いを叶えるために、備えられてきたお金です。

 

ところが、車だのマンションだのを買っているときは、とにかく舞い上がっているので先のことなど少しも考えていません。後になってふと我に返り、将来の生活に不安を覚えるのです。

 

これが、年収5000万円ぐらいの人であれば問題はないのです。月収で400万~500万円稼いでいる人たちは、5000万円の使い方を知っています。

 

ところが、私たちのような一般人にとっての5000万円は、生涯賃金の4分の1ぐらいが一度に入ってくる計算になります。年収にして10年分ぐらいが一気に振り込まれたら、大抵の人は訳がわからなくなります。普段見慣れない桁のお金を目にすることで舞い上がり、冷静な判断はまずできなくなります。

家族の夢や希望に「優先順位」を付け、お金を割り振る

昔、サラリーマンの給料が銀行振込ではなく手渡しだった頃、家庭の主婦はご主人が持ち帰った給料袋から現金を出し、食費、光熱費、教育費等の目的別に封筒に仕訳して管理していました。

 

この場合、給料を保険金と置き換えてみましょう。夫婦で将来の夢や希望を共有していれば、将来、何に対していくらぐらいのお金を用意すべきかを想定することができます。その夢や希望に優先順位を付け、昔の給与手渡し時代のようにそれぞれに必要な金額を割り振っておくのです。

 

実際には保険金のような大金を封筒に入れるわけにはいきませんが、頭の中で同じ作業をすればよいだけです。ライフプランの設計書=デスプランの設計書があるじゃないですか。もし、優先順位1位の項目でお金が不足したら、優先順位の1番低い項目から不足分を補填することができます。

 

よくある失敗は、優先順位の最下位から補填するのではなく、2番目に優先すべき項目から補填してしまうケースです。結局、2番目の項目も資金が不足し、3番目の項目から補填することになります。

 

このように次々と補填を繰り返していくと、結局どこからいくら補填したのかが管理できなくなり、企業で言うなら資金繰りに頭を悩ます事態となります。

 

また、優先順位を付けずにどんぶり勘定でやっていると、何にどれぐらい使ったのかがわからなくなってしまい、これも同じく資金繰りに苦しむ企業と同じことになってしまいます。

 

これでは、家族の将来を守るための保険だったはずなのに、その役割を果たせていないことになります。

 

この話は次回に続きます。

本連載は、2015年6月26日刊行の書籍『死亡保険金は「命の値段」』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

死亡保険金は「命の値段」

死亡保険金は「命の値段」

杉山 将樹

幻冬舎メディアコンサルティング

命とお金に関わる保険は、生きている限りほとんどの人にとって必要不可欠な金融商品ですが、近年、その種類や保障内容が多様化・複雑化しています。 加入者は要望に合わせて自由に保険を選べるようになったものの、その選び方…

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