●6月10日に先物とオプションの清算が重なるメジャーSQを控え、株価は変動幅が拡大する可能性。
●日経平均は今回、28,000円が重要な水準、デルタヘッジや裁定買いなどで一段高となる展開も。
●ただし、SQは戻り高値や押し安値となる傾向もあることから、SQ後の株価の動向には注意が必要。
6月10日に先物とオプションの清算が重なるメジャーSQを控え、株価は変動幅が拡大する可能性
6月物の株価指数先物とオプションは、6月10日に特別清算指数(SQ)の算出を迎えます。今回は先物とオプションの清算が重なる、3ヵ月に1回の「メジャーSQ」です。一般に、メジャーSQの週は、清算価格を巡る思惑的な売買が膨らみやすく、また、先物やオプションの取引主体が、SQ直前の限られた時間で取引判断を迫られるため、株価は一時的に大きく上昇(あるいは下落)しやすくなります。
例えば、何らかのきっかけで株価が上昇し、コールオプションの売り手に損失が発生した場合、この売り手は別途先物を買い、先物の評価益でオプションの評価損を補填する「デルタヘッジ」を行うことがあります。デルタヘッジに伴う先物価格の上昇を受け、裁定業者(主に証券会社)が「裁定買い取引」(先物を売って同時に現物を買う取引)を行えば、現物の更なる株価上昇につながります。
日経平均は今回、28,000円が重要な水準、デルタヘッジや裁定買いなどで一段高となる展開も
では実際に、日経225オプションの取引動向を確認してみます。6月物コールオプションは、28,000円の行使価格で、建玉(たてぎょく、未決済残高のこと)が相対的に大きく積み上がっていることが分かります(図表1)。
そのため、例えばSQの前々日(本日)や、前日(明日)あたりで、日経平均株価が28,000円を超えていると、日経平均株価の上昇ペースが加速する展開も想定されます。
これは前述の通り、デルタヘッジや裁定買い取引によるもので、日経平均株価が28,000円を超えて上昇すれば、各行使価格のコールオプションの売り手には損失が発生するため、売り手のデルタヘッジ(先物買い)と裁定業者の裁定買い取引(先物売り+現物買い)により、日経平均株価が押し上げられるという仕組みです。また、オプションのほか、先物の取引動向にも注意が必要です。
ただし、SQは戻り高値や押し安値となる傾向もあることから、SQ後の株価の動向には注意が必要
先物の中心的な取引主体である海外投資家は、年初の1月第1週から5月第2週まで、日経平均株価の先物(日経225先物と日経225miniの合計)を累計で約8,660億円、売り越していました。しかしながら、5月第3週は約430億円、第4週は約2,720億円、それぞれ買い越しに転じています。先物の買い戻しも、裁定業者の裁定買い取引を通じ、現物の株価押し上げ要因となります。
海外投資家による先物の買い戻しが続けば、日経平均株価が一段と底堅さを増すことも期待されます。ただ、SQ前の価格変動は、基本的にはポジション調整に伴う一時的なものです。また、SQは、日経平均株価の「戻り高値」や「押し安値」となる傾向があります(図表2)。今回は、株価が上昇基調にあるため、6月10日のSQが戻り高値となるか否か、SQ後の株価動向が注目されます。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『日経平均株価28,000円水準とメジャーSQ【ストラテジストが解説】』を参照)。
市川 雅浩
三井住友DSアセットマネジメント株式会社
チーフマーケットストラテジスト