●市場の焦点は、9月以降の利上げペースや利上げ幅、今回の会合ではこの手掛かりを探ることに。
●ドットチャートでは、利上げをもう一段前倒し実行することが適切との見方が示される可能性は高い。
●物価見通しも要注目だが、基本はFOMC声明、ただ今回サプライズとなる公算は小さいとみている。
市場の焦点は、9月以降の利上げペースや利上げ幅、今回の会合ではこの手掛かりを探ることに
米連邦準備制度理事会(FRB)は、6月14日、15日に米連邦公開市場委員会(FOMC)を開催します。通常、3月、6月、9月、12月の会合では、FOMCメンバーによる最新の経済見通しや、メンバーが適切と考える「政策金利水準の分布図(ドットチャート)」が公表されます。そのため、今回はFOMC声明とパウエル議長の記者会見に加え、金融政策を見通す上での有益な材料が追加提供されることになります。
パウエル議長は5月4日、FOMC後の記者会見において、今後2回程度の会合で0.50%ずつの利上げを検討すべきというのがFOMCの大方の見解であり、0.75%の利上げは積極的な議論をしていないと述べました。この発言を受け、市場では現在、9月以降の利上げペースや利上げ幅が焦点となっており、今回の会合では、これに関する手掛かりを探ることになると思われます。
ドットチャートでは、利上げをもう一段前倒し実行することが適切との見方が示される可能性は高い
まず、ドットチャートについて、注目ポイントを整理します。前回、ドットの中央値が示唆する通年の利上げ(0.25%)回数は、2022年が7回、2023年が3.5回、2024年は0回でした(図表1)。2022年は3月に0.25%、5月に0.50%の利上げが実施済みですので、パウエル議長の前述の発言通り、6月と7月に0.50%の利上げが行われた場合、0.25%幅の累計利上げ回数は7回となります。
そのため、今回は2022年の回数が増え、2023年の回数が減り、利上げの一段の前倒し実行が適切との見方が示される可能性が高いと考えます。単純に考えた場合、市場と同様の見方(9月0.50%、11月と12月が0.25%)が反映されれば、2022年は11回、9月以降0.25%との見方であれば10回となります。また、2023年は市場と同程度なら1回強です。なお、新規参加のクック理事とジェファーソン理事の見解は、極端ではないと想定しています。
物価見通しも要注目だが、基本はFOMC声明、ただ今回サプライズとなる公算は小さいとみている
次に、FOMCメンバーの経済見通しについて、注目ポイントを整理します。前回の経済見通しは図表2の通りですが、引き続き、物価見通しへの関心が高い状況にあります。仮に、ドットチャートで、利上げの一段の前倒し実行が適切との見方が示された場合は、利上げ効果の浸透を考慮し、2023年、2024年の物価の伸びが、幾分、落ち着くとの見通しが示されても違和感はありません。
市場はドットチャートや経済見通しに反応しやすいところはありますが、FRBの政策意図を示す基本手段はFOMC声明であり、政策意図を読み取るには、声明の内容を分析する必要があります。ただ、FRBは現状、市場での利上げ織り込みやインフレ警戒の度合いに、ある程度満足している模様であることから、今回は声明で、過度にタカ派方向(あるいは予想外にハト派方向)のサプライズが示される公算は小さいとみています。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『2022年6月FOMCプレビュー ~今回の注目点を整理する【ストラテジストが解説】』を参照)。
市川 雅浩
三井住友DSアセットマネジメント株式会社
チーフマーケットストラテジスト