雑種地はケース・バイ・ケースで考える
相続する土地の中には「雑種地」が含まれているかもしれません。これは住宅地でも農地でも山林でもなく、資材置き場や駐車場などの形で利用されている土地のことです。この雑種地の処分については、ケース・バイ・ケースで考えればよいでしょう。
まず、市街化調整区域にある雑種地であれば、原則として建物を建てられず、例外的に、医療施設や老人ホーム、コンビニエンスストア、ガソリンスタンドなどの施設の建設が認められるだけです。そのため、売却したいのであれば、これらの業者にアプローチすることが有力な選択肢となります。
あるいは市街化区域であれば、納税用地としてそのまま持ち続けておき、相続が始まった後に売却することも考えられます。市街化区域の土地なら、宅地として利用することも可能です。
そこで、たとえば資材置き場であれば、マンションを建てて有効活用を図るか、あるいは、売却してしまい、その代金でより高収益が期待できる別のエリアに不動産を購入することなどを、検討すればよいでしょう。
売りにくい土地から売却していくスタンスを取る
問題地、納税用地については、最終的に処分することになります。通常は、不動産仲介業者に売却の仲介を依頼することになるでしょう。
その際に注意してほしいのは、不動産業者は必ずしも売主の立場に立ってくれるというわけではない、つまりは売主に少しでも多くの利益をもたらそうと考えてくれるとは限らないということです。
ご存じのように、不動産仲介業者は、売主と買主との間に土地・建物の売買契約が成立した時に初めて仲介手数料を得ることができます。つまり、土地が売れなければ業者にとっては全く利益にならないわけです。
そのため、ほとんどの業者は、「売りにくい土地」よりも「売りやすい土地」から売却したがります。「売りにくい土地」とは駅から離れているとか、容積率が低いなど条件が悪い土地のことです。「売りやすい土地」とは逆に、駅から近い、容積率が高いなど条件が良い土地を意味します。
「売りにくい土地」はなかなか買い手が見つかりません。ようやく見つけたとしても、買う側は少しでも安く買おうとします。そのため、売主も、「その値段では売りたくない」と渋ることが少なくないでしょう。そうなれば、業者は別の買い手を見つけてこなければならなくなります。その結果、売買契約にこぎつけるまで時間がかかるのが一般的です。
一方、「売りやすい土地」は条件が良いのですぐに買い手が見つかります。複数の購入希望者が現れることが多いので、価格も売主の提示した額に近い金額で決まることがほとんどでしょう。そのため、成約に至るまで時間がかかりません。つまり、仲介手数料がすぐ手に入ってくるわけです。
このように、業者からすれば「売りにくい土地」よりも「売りやすい土地」を取り扱う方がはるかに効率的に利益を上げられるのです。
そこで、複数の土地を持っているような売主に対しては、「A地よりB地の方が早く売れてすぐにお金になりますよ。ですので、まずはB地から売りませんか」などと、言葉巧みに「売りやすい土地」を売るよう勧めてくるはずです。しかし、このような業者の勧めに乗せられてはいけません。先に「売りやすい土地」から売ってしまった場合、手元には「売りにくい土地」が残ることになります。
では、それを業者が熱心に売ろうとするかといえば、ほとんど期待できないでしょう。業者は、そのために時間と手間をかけることよりも、別の売主の所有する「売りやすい土地」を売ることに労力を割くことを選択するはずです。要するに、「売りやすい土地」を売り尽くしてしまった結果、「売りにくい土地」だけしか手元に残っていない売主は、業者にとってもはや用済みな存在のです。
「売りにくい土地」は、価値が低い土地にほかなりません。土地活用したくてもできない、あるいは活用できたとしても収益が低く、それでいて多額の相続税がかかってくるような土地です。そのような土地が売れないまま手元に残り続ける・・・売主はそんな何とも困った事態に陥ることになるわけです。
逆に、「売りやすい土地」は、前述のように売ろうと思えばいつでも売れます。だとしたら、何もあわてて売る必要はないのではないでしょうか。したがって、業者には、まず「売りにくい土地」から売らせるようにしましょう。
そのためには、「まず、こちらの土地の買い手を見つけてほしい。もしそれができたら、あちらの土地も売らせてあげよう」などというように、「売りやすい土地」の仲介を任せる条件として、「売りにくい土地」を売ることを交換条件にするのも一つの手です。