(画像はイメージです/PIXTA)

AI(人工知能)が我々の未来を変えていくことに対する期待と不安が叫ばれて久しいですが、近年は社会のAI化がかつての推測ほど進んでいないという見方がされています。それには一体どのような背景があるのでしょうか。

AIは推計ほど普及しない可能性も

その処理能力、学習能力の高さから、活躍目覚ましい未来をしばしば推測されてきたAIですが、近年ではこれまでの推計ほど普及しない可能性も指摘され始めています。AI技術の進歩に社会の受容性が追いついていないためです。

 

どんなに革新的な技術を持ち合わせていても各企業、運営組織に採用されなければ一向に普及することはありません。例えば、長期的に高いコストパフォーマンスが見込めても、まとまった初期投資費用は必要なため、銀行融資の審査が厳しい中小企業では移行が簡単ではありません。

 

コスト面に障害のない大企業でも、実際の利便性やリスクヘッジへの不安要素が人を採用した場合より高ければ二の足を踏み、AI導入はを最小限に抑えることもあります。

 

また、運営側に大きな不利点がない場合でも、消費者や利用者に敬遠されるという懸念もあります。

 

例えば、現在すでに店員が接客を行わないセルフレジや病院のセルフ受付などはありますが、完全に人がいない小売店は普及しておりません。たとえAIの精度が高くても、新しいものや人の温もりがなくなることを敬遠する層は、これまでの想像以上に厚かったようです。

 

例えば、オックスフォード大学が2015年に発表した『職種ごとのコンピュータ化可能確率と雇用者数の分布』では、「調理人」や「販売店員」のコンピュータ化可能確率はともに50%前後です。

図表1【職種ごとのコンピュータ化可能確率と雇用者数の分布】(引用 株式会社野村総合研究所)

 

「調理人」と「販売員」の業務を細分化し「ルーティン化」されているものの割合を考慮した場合、50%前後という数値はいささか低いように感じます。これは消費者の受容性の低さが関係しています。

 

このように、技術的には100%代替可能でも顧客の心理的受容性を加味すると100%代替の不可能である事案が今後も増えていくのではないでしょうか。

 

さらに、新しい技術を大規模に導入していくうえでの法整備もまだ追いついておらず、トラブル対処の前例がないことも理由の一つです。近年ではこうした、科学技術と社会受容のバランスに関する課題は「ELSI」(エルシー)問題と呼ばれており社会問題化しています。倫理的(Ethical)、法的(Legal)、社会的(Social)な問題(Issues)の頭文字から、名づけられています。

 

AIに関する「ELSI」(エルシー)問題への取り組みが、AIではなく人間にしかできない仕事ならば、我々は未来でAIと仕事を取り合うことなく、うまく共存できるのではないでしょうか。

 

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