高齢者世代内で「金融資産格差」が著しい理由
高齢者世代内の金融資産分布は、平均値が2097万円に比べ、中央値が1394万円と、金融資産が少ない世帯に分布が偏っています。また、4000万円以上の金融資産を持つ世帯の割合が15.7%である一方、保有額が450万円以下の世帯の割合が19.8%と、金融資産の保有格差が著しいといえます※1。
※1 梶朋美「高齢者の保有金融資産の現状及び課題」『国立国会図書館調査と情報―ISSUE BRIEF―』第1103号、2020年、1-11頁。
高齢者世代内で金融資産格差が著しい要因として、金融資産の蓄積手段別に複数の要因が考えられます。
就労所得からの貯蓄は、若年期からの所得格差とそれに伴う貯蓄額の差の蓄積によることから、金融資産格差は高齢期にかけて拡大していく傾向があり、また相続に関しては、長寿化が進展し、いわゆる「老老相続」が増えていることが指摘されており、相続の有無によって金融資産の格差が高齢期にも拡大しています※2。
※2 梶朋美「高齢者の保有金融資産の現状及び課題」『国立国会図書館調査と情報―ISSUE BRIEF―』第1103号、2020年、1-11頁。
現役時代の職業について、老後の所得には「ブルーカラー・ホワイトカラー」という職種の差を超え、中小企業に対する大企業の優位性があるといえます。第一線を離れ、退職した後の生活にも、過去の職業の影響が色濃く引き継がれていくということです。これは日本の公的年金制度における大企業の優位性が、そのまま反映されている場合が多いからと考えられます※3。
※3 木村好美「「過去の職業」による老後の所得格差」『理論と方法(Sociological Theory and Methods)』Vol.17.No.2、2002年,151-165頁。
また、近年は男性においても雇用の非正規化の影響があります。ここ20年間に男性25-34歳では4%から13%に、男性35-44歳では3%から8%へと上昇しています※4。こうした若年期、中年期を非正規雇用で過ごすことは、資産形成に大きな影響があるのです。
※4 山田篤裕「高齢期の新たな相対的貧困リスク」『季刊・社会保障研究』Vol.46 No.2、2010年、111-126頁。
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