(画像はイメージです/PIXTA)

高齢の父を心配し、自分の家族と一緒に同居して面倒を見ていた娘。しかし、父のお金を管理するほか、自分たちの生活資金のすべても父の財布から出しています。父が亡くなると、別居していた息子は、それを「不当利得」だと主張しますが…。高島総合法律事務所の代表弁護士、高島秀行氏が実例をもとに解説します。

「父親の通帳から下ろしたお金は、不当利得だ!」

太一さんは、奥さんを亡くしてひとり暮らしとなりました。太一さんには、長男の太郎さん、長女の花子さんがいます。太一さんのひとり暮らしはなにかと不便なことが多いと思った花子さんは、太一さんの自宅(花子さんの実家)で、花子さん家族(夫の実さん、娘のすみれちゃん)と一緒に暮らすこととしました。

 

太一さんの通帳は花子さんが管理をしており、太一さんから下ろしてほしいといわれたお金は、花子さんが下ろして渡していました。

 

花子さん家族の生活費等は、水道光熱費から食費に至るまで、すべて太一さんが出していました。もちろん太一さんに家賃も支払っていません。

 

花子さんが同居して5年後、太一さんは亡くなりました。

 

花子さんは、長男の太郎さんから、花子さんが太一さんの自宅に家族で一緒に住んでいたことは賃料相当額が特別受益であり、生活費を出してもらっていたことも特別受益だと主張されましたが、いずれも特別受益ではないという反論をして納得してもらいました(『「親の金で暮らしていたくせに!」老父と同居の妹に兄が迫った〈相続財産の減額〉【弁護士が解説】』参照)。

 

すると太郎さんは、今度は、花子さんが管理していた通帳から下ろしたお金は、花子さんの不当利得となるから、太郎さんに返還するよう求めてきました。

 

花子さんはどうしたらいいでしょうか。

 

①花子さんは、太一さんの承諾を得て通帳の管理をして使っていたことや、太一さんにお金を渡したことなどを証明できなければ、下ろしたお金全額を返還しなければならない。

 

②花子さんは、太一さんの承諾を得て、通帳の管理をして使っていたことや太一さんにお金を渡したことなどを証明できなければ、下ろしたお金のうち太郎さんの法定相続分に応じた2分の1を返還しなければならない。

 

③花子さんは太一さんから依頼されて無償で管理していたのだから、下ろしたお金を返すなどという理不尽なことはあり得ない。

 

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