老後の生活にも大きな影響を与えるのが夫婦仲。「熟年離婚」という言葉がありますが、経済的に見ると、よほどの蓄えがない限り、離婚してもそれぞれが悠々自適で暮らしていくというのは難しいでしょう。経済ジャーナリストの荻原博子氏が著書『知らないとヤバい老後のお金戦略50』(祥伝社)で解説します。

豊かな老後に大切なのは“夫婦仲”という結論

「夫婦仲」がよくて、夫婦で健康なら、老後も豊かになるでしょう。

 

別にラブラブでなくてもいいのです。相手の気持ちが察せられるような、一緒にいてもいろいろと相談できる夫婦なら、家計も一緒に助け合いながら運営していけるはずです。

 

たとえば、地方では車がないと生活できませんが、車の維持費というのは意外と高い。買う時に各種税金がかかり、買ってからも税金を払い、自賠責保険には必ず入らなくてはならないし、大きな事故を引き起こした時のことを想定すると、任意保険にも入っておかなくてはいけない。

 

さらに点検費用、車検費用など、整備維持にお金がかかります。加えて、ガソリン代なども高騰していますから、維持費だけで軽く年間1台30万円を超えます。

 

公共の交通機関が整備されていない田舎では、車は生活の必需品。ただ、お互いにスケジュールを話し合い、送り迎えをし合うことができるような仲良し夫婦なら、1台でもなんとかなるかもしれません。

 

■経済的に熟年離婚は悪手

 

夫婦仲は、老後の生活にも響きます。

 

「熟年離婚」という言葉があります。ひと昔前までは、定年退職した夫が妻にまとわりついて鬱陶しがられて嫌われるというケースが多かったのですが、最近は、夫も趣味が多く身の回りのことができるので、パートなどで疲れて愚痴を言ったり当たり散らしたりする妻と別れ、人生をやり直したいと離婚に踏み切るケースが多いそう。

 

ただ、経済的に見ると、よほどの蓄えがない限り、離婚してもそれぞれが悠々自適で暮らしていくというのは難しいでしょう。

 

今は、離婚したら、年金を夫婦で分割できる「合意分割制度」「3号分割制度」があります。

 

この分割の対象となるのは、会社員や公務員の基礎年金に上乗せされている、厚生年金部分です(2015年9月30日までの公務員の対象者は、共済年金部分)。

 

基礎年金や企業年金などは、分割の対象とはなりません。

 

会社員の夫と専業主婦の家庭なら、ざっくり言えば2人で20万円の年金を、10万円ずつ分けるというイメージです。

 

2人で20万円ならなんとか食べていけても、1人10万円で、アパートを借りて暮らしていくというのはかなり大変でしょう。

 

それよりは、破綻しそうな夫婦関係を修復する努力をしたほうが、幸せな老後を迎えられるのではないでしょうか。

 

■入院も介護も「世帯合算」でおトクになる

 

老後には、さまざまな予期せぬことが起きますが、そうした時も、1人よりは2人のほうが心強いでしょう。

 

たとえば、病気になった時。1人で入院しても2人で入院しても、同じ保険なら、高額療養費制度が使えるので、たいした金額にはなりません。

 

加入者が70歳以上の夫婦で課税所得が145万円未満なら、1人で100万円の入院費がかかっても支払い上限は5万7600円。2人でそれぞれ100万円ずつの入院費がかかって計200万円でも、支払い額は上限5万7600円で済みます。

 

通院も、1人でも夫婦でも、同じ保険なら上限は1万8000円です。

 

介護にも、世帯で合算できる同じような仕組みがあるのは、76ページで説明しました。現役並みの所得がある世帯の場合、1人でも2人でも、月にかかる介護費用の自己負担の上限は4万4400円。住民税を課税されていない世帯の場合には、世帯で2万4600円になります。

 

なかには、DVなど、やむを得ない事情で別れざるを得ないケースもあるでしょうが、そうでなければ夫婦仲を修復し、2人で楽しく生きていけるよう努めましょう。

 

荻原 博子
経済ジャーナリスト

 

 

本連載は荻原博子氏の著書『知らないとヤバい老後のお金戦略50』(祥伝社)より一部を抜粋し、再編集したものです。

知らないとヤバい老後のお金戦略50

知らないとヤバい老後のお金戦略50

荻原 博子

祥伝社

「貯蓄ゼロ」のご家庭は、40代で35.5%、50代で41%(金融広報中央委員会調べ・2021年)と衝撃的な数字になっています。この世代は、給料カットやリストラの対象となり、かなり「ヤバい!」のに、解決策も見出せないまま厳しい…

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録