43年後には、1.3人が1人の高齢者を支える社会に
内閣府の調査発表によると、日本の総人口に対する65歳以上の割合を示す高齢化率は、2017年(平成29年)時点で27.7%に達しています。約3割、すなわち10人に3人が高齢者ということなります。
同じく内閣府の推計によると、43年後の2065年(令和47年)に、この高齢化率は38.4%に達するとの見通しです。すなわち、国民の約2.6人に1人が65歳以上となる社会が到来することになります。現役世代と呼ばれる15~64歳の人口が減少していることを考慮すると、現役世代の1.3人が高齢者1人を支える計算となります。
この見通しでは多くの国民が年金の受給を当てにできなさそうだと考えるのもうなずけます。金融庁が令和元年にまとめた「金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書」で発表されたモデルケースでは、老後資金が2,000万円不足するとも言われ、物議を醸しました。
結果的に本件は、報告書の表現、報道の仕方による広まり方が本質を外しているという、別の問題へと発展しました。当時の麻生副総理兼金融担当大臣は「世間に対して不安や誤解を与えており、政府のスタンスと違う」と述べ、正式な報告書としては受け取らない意向を示しました。
加えて、当時の安倍首相が参議院決算委員会で本件に触れ釈明・反論をしたことで、「老後資金2,000万円問題」が杞憂に終わったイメージをもつ人も一定数増えたかのように思います。
そもそも報告書の「不適切な表現」とは具体的にどの箇所だったのでしょうか?
次の図表1は金融庁がまとめた報告書の21ページの抜粋です。
本文に登場する「不足分」の計算の仕方は、年金収入から支出を差し引いたものです。年金で賄えなかった支出を貯蓄や退職金で補填する額を、「不足分」(=赤字)という単語を用いて表現するのは、誤解を招くと指摘されたわけです。
すなわち、「不足」するか否かは、各自が貯蓄、退職金で補填できるかできないかによるにもかかわらず、「不足分」という表現がなされている。さらに、補填できないことが予想される層は国民の何割なのかが示されていないために、「不足」という事態がどれほど一般的に起こり得るのか曖昧であるにもかかわらず、一般的な事態に捉えさせかねない言い回しだったということでしょうか。