(※写真はイメージです/PIXTA)

近年、湾岸エリアのタワーマンションを中心に子どもの数が急増している。港区の小学校はマンモス校化するなど、周辺状況も一変。「高所得者が暮らす静謐な空間」というイメージを覆す、湾岸エリアのタワマン事情はどうなっているのだろうか。

タワマンのラウンジ、子どもたちが集結して宿題を…

タワーマンション(以下、タワマン)の人気は、いまも変わらず高い。威容を誇る外観、美しい内装、行き届いたサービスに高いセキュリティ。なにより高所得者層が暮らすイメージが強く、憧れの気持ちを抱く人も少なくない。

 

ドラマや映画でも「高所得の、洗練された大人たちの空間」として描写されていることが多く、「タワマン=静謐な場所」を思い浮かべるかもしれない。

 

しかし近年においては、実情は少々異なるようだ。ある不動産会社の担当者に話を聞いた。

 

「タワマンの人気は相変わらずです。ただ、セレブが暮らす洗練された空間とは、必ずしもいえないかもしれません」

 

近年、湾岸のタワマンにはファミリー層がこぞって引っ越し、子どもたちであふれかえっているという。

 

「芝浦周辺は、子どもたちが増え続け、周囲の小学校はマンモス校と化しています。港区の子どもの数が急増したのは、この区域にあるタワマンの影響が大きいといえます」

 

「タワマンのラウンジには子どもたちが集結して、みんなで遊びまわったり、宿題を広げたりと、たいへんな賑わいですよ」

 

登下校時になると、タワマンの周囲の道路は子どもたちの行列ができる。

 

「表現が適切かはわかりませんが、まるで昭和時代の下町のような空気を醸していますね。お客様を内覧にご案内するとき、重厚な扉を開けたらお子さんの声が響き渡っていて、ギャップに驚かれる方も多いですよ」

地方からの転入組が「湾岸エリア」に集まるワケ

コロナ以降、この状況はさらに加速している。前出の不動産営業担当者は語る。

 

「地元での仕事に見切りをつけたのでしょうか、地方から東京に引っ越してくるファミリーが急増しています。そのような方々は、もともとタワマンへの憧れがあり、ネームバリューと予算が交差するところを基準に物件を探します。もっとも、土地勘がないわけですから、ほかに探しようがないわけですが。その結果、必然的にリーズナブルな湾岸方面に集結することになります」

 

品川、田町、芝浦あたりの港南エリアは価格が低く、選びやすいのだ。

 

「お子さんにとっても、近隣にお友達が多いのはいいことですよね。子育て中のご両親も、同じような家族構成のご家庭が多いですから交流も盛んで、お互いの子育てをサポートをしあうなど、タワマン内での助け合いも緊密です。実際に販売したお客様からも伺いましたが、親しいママが集まったママ友グループもあり、その点は普通の住宅街もタワマンも同じなんだな、と」

 

困ったときは子どもを預け合い、珍しいものが手に入ればおすそ分け。子どもたちはラウンジでのびのび遊び、元気な声が響き渡る…。

 

しかし、そこは堅牢なタワマンだ。一度自室の扉を閉めれば、その先には静かな空間が広がっている。

 

今年3月に国土交通省が公表した、全国の不動産価格指数の推移を見てみよう。現在のマンション(区分所有)価値は2010年と比べて1.7倍を超えている。戸建住宅の1.1倍以下と比較すると、極めて急激に上昇したことがわかる。

 

湾岸のタワマンはリーズナブルといっても、あくまでも銀座や虎ノ門と比較すれば…の話でしかない。

 

出所:国土交通省 令和4年3月31日公表
[図表] 出所:国土交通省
令和4年3月31日公表

 

これだけの価格上昇のなか、購入できる層はやはり限られている。

 

「タワマン内で庶民的な生活が繰り広げられていても、購入された皆さん、高所得者層には変わりありませんよ。そうでなければ、ローンはもちろん、高額な維持管理費だって負担しきれませんから…」

 

タワマン内で富裕層が繰り広げる「庶民的で昭和な暮らし」。案外、日本人の本質的な部分は、このようなところに現れているのかもしれない。

 

 

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