40代になると「急速に見えにくくなる」ワケ…意外と知らない「老眼」の仕組み、リスク要因【眼科医が解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

40代頃から始まるとされ、暗い場所や手元などの近距離が見えにくくなる現象、「老眼」。加齢とともに見えにくくなっていくのは常識として知られている話です。しかし、なぜ見えにくくなるのか、メカニズムをご存じの方はそう多くないのではないでしょうか。鈴木眼科グループ代表・鈴木高佳医師が、老眼について解説します。

そもそも私たちは、どうやってものを見ているのか?

図表は、ヒトの目を横から見たときの断面図です。

 

【図表】目の構造とものの見える仕組み

 

光は角膜から目に入り、瞳孔(虹彩〔こうさい〕によって形作られる)、水晶体、硝子体と通り抜けて、いちばん奥の網膜(もうまく)で像を結びます。網膜に映し出された像を、網膜の外層に分布する視細胞がキャッチして信号化します。その情報が脳の視覚中枢へ送られて、処理されて認識されると、脳が「見えた」と感じます。これが「ものが見える」という現象です。

 

老眼のメカニズムは、角膜から水晶体までの仕組みを知ると理解しやすくなります。

 

目のいちばん前面に位置するのが通常ほぼ完全に無色透明の「角膜」です。光の入り口であり、光を屈折させることでカメラでいうレンズの役割も務めています。

 

次がドーナツ状の膜「虹彩(茶目)」、ドーナツの穴に見えるところが「瞳孔(黒目)」です。日本人なら虹彩は茶色、瞳孔は黒色をしているように見えますが、実は瞳孔は単なる穴で実体はありません。最奥に位置する網膜の色素上皮が光を吸収してしまうため、外からは黒い何かがあるように見えるのです。

 

目に入ってくる光の量を調節する虹彩は、カメラの絞りに当たります。光が多いときは絞りを強めて瞳孔を狭め、少なくて暗いときは逆に弱めて瞳孔を広げます。

 

そして瞳孔の奥にあるのが「水晶体」です。タンパク質と水分で構成された、元来はほぼ透明な組織で、形状は前から見ると円形、横から見るとラグビーボールのような楕円形の断面です。

 

水晶体は「水晶体嚢(すいしょうたいのう)」という、薄く透明な嚢(袋)状の膜に覆われています。

「老眼」はオートフォーカス機能が故障した状態

水晶体を正面から見ると、その外側の周縁に「毛様体筋(もうようたいきん)」という筋肉があります。

 

毛様体筋から伸びた「チン小帯(しょうたい)」という網目状の繊維組織が水晶体嚢の外縁部に密着しており、水晶体の位置を固定させているのです。

 

先ほど「角膜はレンズの役割をもつ」と書きましたが、水晶体もレンズの役割を担っています。角膜は凸レンズのように光を屈折させますが、形をほとんど変えられないのでピント調節はできません。その点、水晶体は元来、弾力性と柔軟性があり、毛様体筋やチン小帯と連動することにより、ピント調節の機能も果たしています。

 

例えば遠くを見るとき、毛様体筋はゆるみます。するとチン小帯でつながった水晶体嚢が引っ張られ(このプロセスの理解は少し直感に反する場合もあって分かりづらいのですが)、内部の水晶体ごと、楕円形の厚みが薄くなる仕組みです。薄くなった水晶体は屈折力が低下し、遠くにピントを合わせることができるのです。

 

反対に、近くを見るときは毛様体筋が収縮し、チン小帯はゆるんで、水晶体が厚みのある状態のままでものを映します。この毛様体筋とチン小帯と水晶体が連動した「引っ張られたり、ゆるんだり」の動きで、目はピントを調節しています。

 

若い頃の健康な目は、いわばカメラのオートフォーカス機能がうまく働いている状態です。毛様体筋が素早く動き、水晶体も弾力があって柔軟なため、意識しなくても脳との協働により、自然にピントの位置を調節してくれます。

 

しかし年齢を重ねると毛様体筋が衰え、水晶体は弾力を失って硬くなっていきます。

 

その結果、オートフォーカス機能が働かなくなり、ピント調節がうまくできなくなった状態が「老眼(老視)」なのです。

 

近視・遠視・乱視が「屈折異常」と総称されるのに対し、老眼は「調節異常」というカテゴリーに含まれます。調節異常は毛様体筋が衰え、水晶体は硬くなって伸び縮みできなくなったことにより、ピント調節機能がうまく働かなくなった状態を指します。

老化の一因として有力視される「身体の酸化」

毛様体や水晶体、虹彩は、加齢によって十分な機能を失います。つまり老化現象の一種ですが、この私たちが日常で使う「老化」という言葉は、実は身体の「酸化」と密接な関係があることが分かってきました。

 

「酸化」とは一般的に、ある物質が酸素と結合して変質することを指します。鉄が錆びるのも酸化ですし、揚げ油が次第に劣化するのも酸化です。

 

私たちの身体も鉄や揚げ油と同じように、日々、酸化を繰り返しています。なぜなら人間は、呼吸をしなければ生きていけないからです。

 

人間は呼吸をして生きています。呼吸で体内に取り入れた酸素は、血液中の赤血球によって全身の細胞に運ばれます。そして細胞内でブドウ糖や脂質を燃やし、生命を維持するために必要なエネルギーを生み出します。

 

ところが体内に入った酸素の一部は、「活性酸素」という物質に変化します。

 

適度な量の活性酸素は細菌やウイルスを死滅させたり、食品添加物などの有害化学物質を無害化したりと私たちの身体のために働いてくれます。しかし量が増え過ぎると、健康な細胞まで攻撃し始めます。

 

この活性酸素こそが身体を酸化させる張本人であり、攻撃された健康な細胞が損傷を受けることが酸化(酸化的障害)の正体なのです。

 

老化の原因は諸説あり、現在もすべてがはっきり分かっているわけではありません。例えば「老化や寿命は、その生物にあらかじめプログラミングされた死への過程」とか、「機械や道具と同じで、長く使っているうちガタがくるだけ」という意見などさまざまな説があります。

 

しかし近年は「活性酸素によって身体の血液、細胞や組織が酸化し、機能が衰えていくことが老化現象」という考え方も老化の原因の一つとして有力視されています。その説に従えば、生きて呼吸をしている限り、身体の酸化=老化は致し方ないということになるでしょう。

 

なお人間の身体にはもともと、余分な活性酸素を取り除くような酸化防止システム、すなわち「抗酸化力」をもつ酵素グループの生産機能なども備わっています。ただそれも年齢を重ねると働きが弱まり、40歳を過ぎると抗酸化力は急速に減少します。いずれにしても加齢は身体の機能を低下させて、若い頃には簡単だったことを難しく変えてしまうのです。

 

活性酸素の量と抗酸化力とのバランスが崩れた状態を「酸化ストレス」といいます。

 

酸化ストレスを招くリスク因子には、次のものが考えられます。

 

<酸化ストレスのリスク因子>

●喫煙・受動喫煙(煙、タール成分など)

●紫外線

●放射線(ガンの放射線療法を含む)

●大気汚染物質(排気ガスを含む)

●酸化した物質の摂取(焦げた料理、腐った食品など)

●過度の飲酒

●過労・過度な運動

●精神的ストレス

 

目への影響でいえば、このなかで特に注目したいのは紫外線です。光がなければ目は見えませんから、光に含まれる紫外線のリスクは避け難いものといえます。

 

 

鈴木 高佳

鈴木眼科グループ代表

 

鈴木眼科グループ代表

神奈川県逗子市出身。栄光学園中学校・高等学校卒、1994年日本医科大学卒。日本医科大学付属第一病院にて麻酔科研修後、横浜市立大学医学部付属病院眼科に所属する。この間、同大学病院、函館の藤岡眼科病院、小田原の佐伯眼科クリニックへの勤務を通して白内障手術をはじめ眼科一般の経験を積む。

2002年より東京歯科大学市川総合病院眼科にて角膜疾患の診断・治療に携わる。また同年、日本国内での多焦点眼内レンズの厚生労働省治験を行った、東京歯科大学水道橋病院眼科のビッセン宮島弘子教授の助手として同眼科に勤務し、2006年3月まで、手術、診療、臨床研究に従事。同大学ではほかに、レーシックをはじめとする屈折矯正手術と日帰り白内障手術を専門に行う。

2006年国際親善総合病院眼科部長に就任。網膜硝子体疾患に対し手術および内科的治療(光線力学療法、抗血管内皮増殖因子硝子体注射療法など)を導入し、多数の患者の診断と治療を担当。

2010年4月、神奈川県横浜市のJR戸塚駅前に戸塚駅前鈴木眼科を開院。現在は同クリニックの理事長を務めるほか、同クリニックをはじめ県下に計4カ所のクリニックから成る鈴木眼科グループの代表を務める。

著者紹介

連載老眼・近視・乱視の悩みを解決!多焦点眼内レンズで叶える「生涯裸眼生活」

※本連載は、鈴木高佳氏の著書『メガネ・コンタクトレンズはもういらない!多焦点眼内レンズ入門』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

メガネ・コンタクトレンズはもういらない!多焦点眼内レンズ入門

メガネ・コンタクトレンズはもういらない!多焦点眼内レンズ入門

鈴木 高佳

幻冬舎MC

鈴木眼科グループ代表の鈴木高佳氏が老眼・近視・乱視・白内障の悩みを老眼鏡なしで解決する多焦点眼内レンズについて解説します。

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